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あなたのとりこ 518 [あなたのとりこ 18 創作]

「坊主のアルバイト代と込みなら、何とか今の生活を維持していけるだけの収入が確保出来ると、そんな風な計算をしているのかも知れない。」
 ここで日比課長が口を開くのでありました。
「いや、アイツの坊主のアルバイトは、肩書きこそ、副住職、と云う偉そうなものだけど、実際は自分から頼み込んで遣らせて貰っているみたいで、お盆とかお彼岸だとかの坊主の繁忙期に住職の手伝いであちらこちらの檀家回りを分担して、その分の割り前を貰うと云う形のようだから、坊主稼業で大忙し、と云う感じじゃないんじゃないのかな」
「おや、袁満君は土師尾常務のアルバイトに関して結構詳しく知っているなあ」
 日比課長が意外と云った顔つきをして見せるのでありました。
「ずっと前にそんな話しをチラっと聞いた事があったんだよ。それに第一、あんなヤツがそれ程坊主として重宝されているとも思えない。屹度お金に対してはそっちでも業突く張りで通っているんだろうから、実はお寺の方からは疎まれているのかも知れないし」
「ああ成程ね。まあ確かにお寺の方で充分な収入があるなら、ウチの会社になんかに居座らないで、とっくの昔にそっちの道に専念しているか」
「まあ時々、ウチの仕事をサボってそっちの方に精を出している事はあるけどね」
 袁満さんはここで憫笑して見せるのでありました。「まあ要するに、お寺のアルバイトだけではとても食っていけないから、ウチを辞めないんだよ」
「じゃあ、全員解雇を目論んで会社を台無しにしたら、土師尾さんとしても困る訳ね」
 那間裕子女史が話しを本筋に戻すのでありました。
「まあ、袁満さんの今の話しが本当だとしたら、と云う事だけどね」
 ここで今迄捗々しく話しに参加してこなかった均目さんが口を開くのでありました。
「絶対そうかと聞かれれば、俺としてはちょっと自信が無いところもあるけど」
 袁満さんが均目さんに及び腰を見せるのでありました。
「まあ、全員解雇の目論見があるのなら個々順番に退職を唆したりとか、そんなまわりくどい事をしないで、もっと簡単で手っ取り早い方法がありそうなものよね」
 那間裕子女史が云うと頑治さんが頷くのでありました。
「そうですね。土師尾常務は短気で、時間を掛けてじっくり謀を遂行すると云うのは苦手のようですから、確かに全員解雇したいならもっと短絡的な方法を取るでしょうね」
「じゃあ要するに一人か二人、会社にとって比較的重要でない人を辞めさせて、それで会社を何とか存続させていこうと云う肚、と云う事になるか」
 均目さんが腕組みして宙の一点を見ながら云うのでありました。
「それにしてもその最初の一人が唐目君だとは、アイツも人を見る目が無い」
 袁満さんがビールが半分ほど残っていた自分のグラスを空けるのでありました。頑治さんは何だか嫌に自分を買ってくれている袁満さんに少しヨイショをする心算で、その空になったグラスに丁重な手付きでビールを継ぎ入れるのでありました。
「土師尾常務は唐目君の何に依らずカッチリした仕事振りを、秘かに持て余しているのかも知れない。自分が相当好い加減なヤツだと云う事を内心知っているものだから」
(続)
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