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あなたのとりこ 501 [あなたのとりこ 17 創作]

「あの二人が知恵を絞っているんですから、大した話しにはならないないでしょうね」
「単に、大した事じゃない話しだけをしているのなら寧ろ結構だけど、またもやつまらない謀をしているんじゃないかとも考えられるぜ」
「つまらない謀、と云うのは、どんな謀ですか?」
 頑治さんがそう訊くと袁満さんはちょっと言葉に詰まるのでありました。具体的に是々然々と思い付く事はすぐにはないようであります。
「つまり、自分達には都合の好い事で、従業員にとっては不利益になる事かな。まあ、会社全体としては間違いなく最悪となるような事、だよ」
 その自分の応えが如何にも漠然としているのが云った傍から自分でも判るので、袁満さんは何となく決まり悪そうにもじもじするのでありました。
「会社全体にとっては最悪の事、ですか。・・・」
 頑治さんは車のドアをロックして確実に扉が開かないかどうか確認してから、横に立っている袁満さんを見るのでありました。「例えば、会社解散とかですかね」
「自分達に都合が好ければ、そう云う事も恐らく考えるかも知れない」
「しかし会社が解散すると、土師尾常務も失業すると云う事になりますよ」
「まあ確かに、それはそうだけど。・・・」
 袁満さんは口を尖らせるのでありました。
「それに自分はあくまで楽をして報酬を得ようと考えているようだから、取締役と云う地位に恋々としがみ付いて、社員を扱き使っている方が楽が出来るじゃないですか。と云う事は今の会社を解散するのは、常務の魂胆からすれば得策とは云えないでしょう」
「でも一端会社を閉じて、俺達全員を解雇して、また新たに誰か雇えば、何かと煩い労働組合はなくなるし、人件費もグッと抑えられるだろうし」
「そう云う面倒な手間を、土師尾常務は態々かけたがりますかね。あの人は自分のためなら非道な事でも何でも敢えてでもする、と云う人ではなく、実はどちらかと云うと微調整はするけれど実質は至って現状維持派で、現状の中で抜け目なく甘い汁を吸おうと考えるタイプの人ではないですかね。まあ、社長から明確な、一端会社解散と云う方針が出されれば別ですけどね。それに社長にしてもそこ迄、肚の座ったいざこざ好きの策士、と云う風じゃないですし、どちらかと云うと体面を気にする見栄っ張りのタイプでしょうし」
「それもそうだと、俺も思うけどさあ。・・・」
 袁満さんは一応納得したようでありましたが、土師尾常務と社長が出し抜けに何かやらかすのではないかと云う一抹の不安は未だ消せないようでもありました。
「思い切った事を仕出かす度胸は、土師尾常務にも社長にもないように俺は思いますけどねえ。まあ尤も、俺の勘はそんなに良く当たる方ではないですけど」
「例えば日比さんと、それに制作の均目君の二人だけ残して、俺と唐目君と那間さんと、それに甲斐さんの首は斬る、と云うのは唐目君の云う微調整の範囲じゃないかな。下の紙商事の人に経理を兼任して貰えば、多分甲斐さんもお払い箱に出来るし」
「可能性は、あるかも知れませんね」
(続)
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