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あなたのとりこ 370 [あなたのとりこ 13 創作]

 当初からお流れ派の筈の袁満さんが、ここでなかなかきっぱりしない素振りを見せるのでありました。まあ、信義に於いて正当な意見と云うべきではありますが。
「事実とか方針だけ聞き質すと云うスタンスで、出来る限り内容の具体的な議論を避ける、と云う態度で臨むかな。どうせ土師尾常務相手では話しを掘り下げようとしても実のある議論にならないだろうから。そんな風に会議の意味が薄くなるのを承知で、円満に短時間で切り上げる事のみ念頭に置けば、一応会議を要請したこちらの顔も立ちはするか」
 均目さんが一種の打開策を披露するのでありました。
「そう云う事なら、態々会議をする意味なんか無いじゃない」
 那間裕子女史が舌打ちするのでありました。
「そりゃそうだけど、土師尾常務との余計な軋轢回避のみを考慮して、ま、会議を予定通り開くは開くとしても、あんまり意気込まないで、チャッチャとやっつけ仕事的に片付けると云う、弱腰の方策と云う意味でね、まあ、そう云う方法も、・・・」
 均目さんは歯切れ悪く語尾を収めるのでありました。
「下らない」
 この那間裕子女史の言は、別に前に会社に居た刃葉さんの口真似と云う心算ではないのだろうなあと、頑治さんはここでは何の関係も無い事を、ふと考えるのでありました。
「そんなんだったら、矢張り会議はお流れにした方がマシじゃない」
 甲斐計子女史も何となく鮸膠も無いのでありました。
「でも、アンタじゃ話しにならないからお流れにしたって云う、如何にもぞんざいに扱っているところは露骨にあの人にも伝わるだろうし、そうなるとまた臍を曲げて色んな陰湿な報復をしてくるかも知れないし。お流れにしたその後が何だか怖い気もするなあ」
 袁満さんが女性二人の強気に弱々しく抗うのでありました。
「まあ、怖いと云うよりも、面倒臭いと云った方が良いっスかねえ」
 出雲さんもお流れ派弱気連合に加担のようであります。
「何と云ってもこちらから云い出した会議なんだから、時間の無駄を承知で一応ちゃんと開いてチャッチャと終わらせれば、何はともあれ無難に片が付くんじゃないかなあ」
 均目さんも弱気連合に入会であります。
「唐目君はどう思う?」
 那間裕子女史が頑治さんの方に顔を向けるのでありました。
「俺も信義上の弱みを作らないと云う意味で、均目君のチャッチャに賛成ですかねえ」
 これで強気連合二人対弱気連合四人と云う勘定であります。
「確かにつまらない時間潰しで不本意ではあるけど、その方が後々穏やかかもね」
 甲斐計子女史が弱気連合側に擦り寄るのでありました。これで一対五であります。依って会議は鬱陶しくはあるけれど予定通り開催と決まるのでありました。

 昼休みが終わる頃に土師尾常務が会社に出て来るのでありました。袁満さんがすぐに片久那制作部長が本日風邪で休みである事を土師尾常務に告げるのでありました。
(続)
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