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枯葉の髪飾りCCⅩⅩⅡ [枯葉の髪飾り 8 創作]

<なんば云いよっとか。そがんとが出来るわけのなかやっか、お前が居るとに>
<あたしはもう、そっちには居らんとよ>
 写真の吉岡佳世が云うのでありました。<井渕君が居る処とあたしの居る処は、もうなんの連絡もない、全く違う世界やからね>
<ばってん現に、こうして話すことの出来るやっか>
<そうね、そうやけど、それでもやっぱり違う世界やもん>
 写真の彼女の云い種に拙生はひどく寂しくなるのでありました。
<オイはお前が違う世界に行って仕舞うたとしても、何時までもオイの恋人はお前て云う気持ちでおるとばい。これはそう簡単には変わらんとばい。お前の方はもうオイのことば恋人て思わんようになったとか、そっちに行って仕舞うたら?>
<ううん。前と同じくらい好きよ、今でも。そいでもそれは、完結を持たない思いて云うか、動きを持たない思いて云うか、そんな感じのものやもん>
<完結を持たない思いとか、動きを持たない思いとか、なんやそれは?>
<うまく説明出来んけど、そうね、もの凄く深い処を流れてる、地下の水脈みたいなものかな。何時までも何時までもずうっと流れ続けてるとやけど、絶対地上には噴出しない流れて云うのか・・・>
<よう判らんね、オイには>
<あたし頭の悪いけん、上手い説明の思いつかん>
<こうして、話すことの出来るとやから、相かわらずオイとお前は恋人同士やっか>
<そうやけど、詰まりね、そっちの世界の恋愛は、ちゃんとそっちで完結せんといかんの。そっちの世界に居る者同士が、相手に触れたり、相手の息を感じたりして、完結に向かって色々動かんといかんのよ、どんな完結になるにしてもね。云ってみれば、あたしと井渕君は、もう、完結してしまったの>
<ばってん、まだこうして話せるとなら、完結しとらんやっか。オイはそれで充分ぞ>
<でも多分、もうすぐ話せんように、なって仕舞うやろう>
 拙生はその言葉に衝撃を受けるのでありました。
<オイのことば、もう好きやなくなったて云うことか?>
<そうじゃなくて、違う世界に居ることになったて云うこと、あたしと井渕君とは>
<違う世界やろうとなんやろうと、オイは未だお前のことが好いとるとやもん>
 そう云いながらこの拙生の言葉が、なにやら子供が駄々を捏ねているような云い種にしか思えなくて、こんな言葉を吐く自分にうんざりするのでありました。
<あたしも何時までも井渕君のことは好きよ。でも、あたしの手にも唇にも触れることが出来んし、あたしの息も感じることが出来んとやから、井渕君の気持ちは時間が経つに従って次第に動きを失くしていって、最後には消えていくとよ、当たり前のこととして>
<そがんことの、あるもんか!>
 拙生は声を出さずにそう叫ぶのでありました。<どんなに時間が経とうが、それにお前に触れられんやろうと、オイは何時までもお前が恋人ぞ!>
(続)
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