枯葉の髪飾りCⅩⅩⅩⅥ [枯葉の髪飾り 5 創作]
拙生と吉岡佳世はデパートの玉屋を尻目に今度は四ヶ町へと歩を進めるのでありました。三ヶ町に比べると四ヶ町の方が大規模店舗や飲食店が多く並んでいて、歩く人の数も多い賑やかなアーケードであります。説明が遅くなりましたが、三ヶ町と云うのはアーケードの通りを挟む三つの町からなる商店街と云う謂いでつけられた名称であります。同じく四ヶ町とは四つの町に跨るアーケードであります。ですから四ヶ町の方が長いアーケードと云うことになります。元々佐世保の繁華街の目抜き通りはこの四ヶ町で、アーケードになったのも三ヶ町よりは此方の方が早いのでありました。
さて、四ヶ町に入って暫く歩くと右手に目指すレストランの白十字パーラーが見えます。ケーキや菓子の並ぶショーウィンドー横のレンガの階段を二階に上がると、レストランの木枠にガラスの嵌めこまれた扉があるのでありました。扉には鈴が取りつけられていて、拙生が扉を押し開けると鈴の音が店内に響き渡るのでありました。昼食時で結構席が埋まっているものでありましたから、拙生と吉岡佳世は空いている席を探して店内を奥へと進むのでありました。
窓際の四人掛けのテーブルが空いていたのでそこへ拙生と吉岡佳世は着席します。透かさずウエイトレスが水の入ったコップを銀盆に載せて此方へやって来ます。拙生がそのウエイトレスに高校を出たての子倅と見くびられたくないものだから、なるべく場馴れしている者の鷹揚さを装って椅子に座っているのは、今まで親と一緒にしか此処へ入ったことがなく、女性をエスコートして食事をすると云う初めての経験に緊張していたからに他ならないのでありました。
拙生はウエイトレスからメニューを受け取って、それを開いてからひっくり返して向かいに座る吉岡佳世へ渡します。
「何にするや?」
「そうねえ、あんまり一杯、あたし食べられんから・・・」
吉岡佳世はそう云いながらメニューに目を落とします。
「オイはトルコライスにしようかね」
それは前に此処で注文したことの或る料理で、結構ボリュームがあって美味かったものでありますから、拙生は店に入る前からそれを注文しようと決めていたのでありました。トルコライスとはどうやら長崎県内特有のレストランメニューで、大皿一枚の上にドライカレーとスパゲッティーと豚カツ、それに添え物のサラダが載った料理であります。
「あたしは、マカロニグラタンにしよう」
吉岡佳世が料理を決めたので拙生は横に立っているウエイトレスに二つの料理を、ぶっきらぼうな声の調子で注文をするのでありました。
「マカロニグラタンは、少し時間のかかるですよ」
ウエイトレスが云うのでありました。
「時間のかかるてばい。どがんする?」
拙生は吉岡佳世に聞きます。吉岡佳世はほんの暫く悩んで、それでもあたしはマカロニグラタンにすると云うのでありました。
(続)
さて、四ヶ町に入って暫く歩くと右手に目指すレストランの白十字パーラーが見えます。ケーキや菓子の並ぶショーウィンドー横のレンガの階段を二階に上がると、レストランの木枠にガラスの嵌めこまれた扉があるのでありました。扉には鈴が取りつけられていて、拙生が扉を押し開けると鈴の音が店内に響き渡るのでありました。昼食時で結構席が埋まっているものでありましたから、拙生と吉岡佳世は空いている席を探して店内を奥へと進むのでありました。
窓際の四人掛けのテーブルが空いていたのでそこへ拙生と吉岡佳世は着席します。透かさずウエイトレスが水の入ったコップを銀盆に載せて此方へやって来ます。拙生がそのウエイトレスに高校を出たての子倅と見くびられたくないものだから、なるべく場馴れしている者の鷹揚さを装って椅子に座っているのは、今まで親と一緒にしか此処へ入ったことがなく、女性をエスコートして食事をすると云う初めての経験に緊張していたからに他ならないのでありました。
拙生はウエイトレスからメニューを受け取って、それを開いてからひっくり返して向かいに座る吉岡佳世へ渡します。
「何にするや?」
「そうねえ、あんまり一杯、あたし食べられんから・・・」
吉岡佳世はそう云いながらメニューに目を落とします。
「オイはトルコライスにしようかね」
それは前に此処で注文したことの或る料理で、結構ボリュームがあって美味かったものでありますから、拙生は店に入る前からそれを注文しようと決めていたのでありました。トルコライスとはどうやら長崎県内特有のレストランメニューで、大皿一枚の上にドライカレーとスパゲッティーと豚カツ、それに添え物のサラダが載った料理であります。
「あたしは、マカロニグラタンにしよう」
吉岡佳世が料理を決めたので拙生は横に立っているウエイトレスに二つの料理を、ぶっきらぼうな声の調子で注文をするのでありました。
「マカロニグラタンは、少し時間のかかるですよ」
ウエイトレスが云うのでありました。
「時間のかかるてばい。どがんする?」
拙生は吉岡佳世に聞きます。吉岡佳世はほんの暫く悩んで、それでもあたしはマカロニグラタンにすると云うのでありました。
(続)
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