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養神館と合気会の差異Ⅰ [合気道の事など 1 雑文]

 これはあくまで養神館、合気会のそれぞれの稽古におけるねらい処を考察したもので、前の文にも記したようにその優劣を述べようとするものではないことを、まず断っておきます。また、養神館の技法が戦(第二次世界大戦)前、合気会の技法が戦後のものと、細かいところでは異論もあるでしょうが、一応分けることとします。この辺の話を始めるとまた別項をたてなくてはならなくなるので、とりあえずご了解ください。それに、拙生は養神館合気道を長く稽古してきた者でありますが、その前に少しの期間ではありますが合気会の稽古も経験しております。これも念のため記しておきます。
 養神館合気道の場合先ず最初に習うのが前重心で正面をとる構えであります。それからその姿勢を保持したまま正座法、礼法、膝行法へと進んでいきます。ねらいは自分の垂直方向の中心軸意識を強めるためであります。この後に基本動作六本を習いますが、これは中心軸を意識したままそれがブレないで前進後退、回転、重心移動を行えるようにするための稽古であり、手足腰の動作を一致させて、発する力を一つに纏める稽古であります。これはまず単独動作で修得し、後に相対動作として相手との関係の中で体感していきます。これにかなりの稽古時間を費やします。それから後に技の稽古に入っていきます。合気会の場合は特にそう云った所作や動作の厳格な決め事はなく、すぐに技から入っていきますが、それは初めから相対的な環境の中で体軸であるとか重心移動とかを、体感的に身につけようとしてのことでありましょう。
 この養神館合気道の稽古では自分の中の非合気道的な個性を徹底的に排除されます。云わば自分を合気道の稽古に適するようにつくり変えることを要求されます。かなりの難関を先ず最初に与えられることになります。しかしここをクリアすると技の稽古に入った後に比較的スムーズな稽古が出来るようになります。最初に習った所作や基本動作の組み合わせと変化が技を構成していることが判るためです。また強い中心軸、崩れない姿勢等の体を錬ると云う意識が強くなり、これが後の技における威力等に反映していきます。ただ、硬い稽古になるので往々にして固まるような動きになりがちです。力が出ると云うよりはこもる感じであります。それが強引な技として結果する危険性は大いに孕んでいます。
 一方合気会の稽古ですが、養神館の稽古が先ず自分を錬ることを念頭に置くのと異なり、あくまで相対的な関係の中で技を捉えようとする意識が養成されるでありましょう。対する相手の情報を瞬時に察知しようとする感覚は鋭くなります。相手の一歩にどう合わせるかとか、相手の動きの初動をどう捉え返すかとか。云わば先ず相手に対する武技上の配慮が養成されるでありましょう。半面、配慮するが故に結果初動に遅れをとって、動きの主導権を相手に握られてしまう危険もあります。
 養神館が技の前に体なり中心線をつくる作業から始めるのに対して、合気会では最初から技そのものを行うことによって、そして技を繰り返すことで体とか中心の意識をつくっていこうとするわけで、稽古のとりかかりからしてすでに、稽古をしようとする「主体」の認識に違いがあると云えるでしょう。この違いは当然技の解釈にも反映されます。
(続)
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姥桜のかぐや姫

なんとなくですが養神館と会気会の差異がわかりました。
武道とは攻撃又は防御の為と思っていましたが
養神館の内なる鍛錬?に大変興味を覚えました

ど素人の身でのコメントお気に障りましたらお許しください。
by 姥桜のかぐや姫 (2011-03-05 12:11) 

汎武

拙文は養神館合気道の全く大まかな概論、及び合気会のこれも大まかな在りようとの違いを、己の知識足らずを省みず述べたものでありますから、あくまでも拙生個人の認識であるとご理解ください。
養神館合気道の方も現在では、内へ留まった先生、外へ出た先生と、各先生方の立場やお考え、その実態、或いは個性によって様々な変容を見せているようでありますから、ことは余計複雑多岐且つ混沌とした様相になっているようであります。
武道が人間が創始した「人間技」である以上、伝承と云う点で、変容を余儀なくされるのは仕方がないことでもありましょう。
また養神館と合気会の技(特にその発動の第一歩目)の差異がどのようにして生まれたのか、今現在、その歴史性がおぼろげに解けるような気がしております。いずれ文章に纏めてみたいと考えておりますが、しかしこれも知識足らずの拙生のことでありますから、大いに独りよがりな誤謬に満ちたものになることを一方で恐れるものでもあります。

by 汎武 (2011-03-05 16:04) 

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