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養神館と合気会の差異Ⅱ [合気道の事など 1 雑文]

 ではこれから技における差異について述べたいと思います。合気会では二代目道主である植芝吉祥丸先生が云われた「入り身一足」と云う表現があります。単に「入り身」ではなく「入り身一足」であります。『合気道のこころ』(講談社刊)によりますと「互いに触れあおうとする一瞬、半身の構えから、相手の動きの延長線をはずしてその動きとすれ違うかたちに自分の体を相手の死角に入れるのが<入り身>であり、そのさい足の移動がきわめて速やかにおこなわれなければならないゆえ<入り身一足>と称するわけである」とあります。確かに合気会の技法では例えば正面打ち一教と云う技の場合、手刀が触れあったと同時に表技なら相手の振り下ろされる手刀と同側の足が、裏技なら逆側の足が相手の正面を外すように横方向に進められます。手刀が触れた時には自分の体は相手の正面にはないと云う位置関係です。その後に表技なら相手側に大きく切りこむように歩み足で踏み出し、裏技なら「円転」して螺旋回転に相手を巻きこんで制します。
 これが養神館合気道の場合、呼称も正面打ち一ヶ条抑えとなりますが、相手の手刀打ちを正面で、同側の手刀で先ず受け止めます。もっとも一ヶ条の一(表技)の場合は仕手より打ち込むのでありますが、とまれ一見ぶつかりに見えてしまいます。しかし真っ向からぶつけるのではなく、体の中心を利かせた強固な線と手刀の返しで相手の力の線を上に浮かせるように受け止めます。この後に軸となる前足=重心足を表技は手刀と同側斜め前方に大きく進め、相手に膝をつかせて、まるで蹲らせるように相手の肘を制圧します。裏技なら前足=重心足を横移動することなく、受け止めた位置から体を回転させ螺旋回転に相手を巻き込みます。この裏技(養神館では「二」の技)が象徴的に両派の技の違いを表していると云えるでしょう。
 合気会では「一足」の分軸が横に移動します。その動いた軸をもって回転をかけるのですからその軌跡は楕円を描きます。そうすると回転そのものの速度は犠牲になりますが、力の拮抗を避ける分安定感はあるでしょう。但しこの「一足」の場合、もしこの一歩を誤れば速く重い相手の手刀にこちらの初動が負けて体軸に歪みが生じますので、もう次の動きに移れないと云う危険性があるでしょう。技が成立しなくなるのです。養神館の場合はこの「一足」がないために手刀を受け止めた状態から一気に正円の軌道で円運動を開始することになります。正円の軌道ですから一旦円運動に入ったらそれは強力な遠心力、求心力を発揮出来るでしょう。但し基本動作の反復により、よほど強い中心線と体幹を確立していなければ、やはり初動で負けることになります。
 合気会の技は相手の打つ手刀と自分の初動を合わせるタイミングに、技の成立がかかっていると云えるでしょう。ですからまずはゆっくりと動きを合わせる稽古になります。技の完了までなるべくゆっくりと途切れ目なく動く稽古です。しかしそう云う稽古に終始しているのではなく、次第に速く強く打ちこんでもらって「一足」の運びを錬らなければ、技の完成度は上がらないでしょう。速い合わせが出来るなら遅い合わせも出来ますが、遅い合わせしか稽古していなければ、早い合わせは出来難いでありましょう。
(続)
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