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合気道家の矜持 [合気道の事など 1 雑文]

 養神館合気道を志す者、愛好者にとって初代館長塩田剛三先生のお名前は云わば絶対的なものであります。養神館合気道は総て塩田剛三先生から発しているのです。これは自明の理であります。そうして塩田剛三先生の師である植芝盛平大先生のお名前も、養神館合気道修行者、愛好家にとってとても大切なものであります。この偉大なるお二方は合気道史的に通時的に存在されているのであり、共時的な観点からどちらかの優越を論じるのは意味のないことであります。
 巷間よく闘わされる養神館と合気会の技術比較論においてもそれは同様であります。乱暴に云えば武術としての優劣は試合ってみなければ判らないものであるし、指導体系の優劣は優秀な弟子をいかに多く出したかによるしかないのですから。しかも勝ち負けが技術論に合致するためには、試合する者同士がそれぞれの立場で同等の実績、戦歴を持つと云う条件の上において証明されることであります。また勝負は兵家の常と云われるように、結果が必ずそれぞれの技術の優劣を保証するとは断じられないのです。
 優秀な弟子を輩出出来るかどうかと云う点も、当然多くの修行者、愛好家があれば多くの優れた人材が存在する可能性が高く、幾ら技術が優れていても学ぶ人材が少ないなら、それは可能性が低いと云うのは統計学的に自明のことであります。しかしこれもあくまで可能性の問題と云うもので、決定要因としては不確実であります。それに愛好者の多寡のみで語れる話でもありません。何れにしろ優劣は俄かには断じられないのであります。
 ここで断っておくのでありますが、差異について論ずるのはこの限りではないでしょう。あくまで狂信的なまでの自派絶対化が、論ずる人の思考にかさぶたのように被さっていないと云うこと、それに自派の宣伝と云う下心がないと云うことが前提条件でありますが。
 技術の優劣を論じたがるのは養神館合気道の愛好家に多いように見受けられます。曰くより護身術的であるとか、大先生の一番強い時期の弟子たる館長先生は武道としての合気道を継承しているとか云ったものです。これは上記のような理由から根拠が希薄であると云うしかありません。館長先生と云う個人が強かったからと云ってそれが即ちその一派に属する自分も強いわけではないのです。また大先生は各時期において個別に、まったくの別人として存在されていたわけはなく、一個の人格、個体の時間的な流れとして緩やかに変化されたので、これはその人の生の過程では当然なことであり、後の方が前より劣っていると誰が断定出来るのでしょうか。感覚的な技術優越論を展開するのはかえって、合気道愛好者として矮躯な自分の姿を曝け出しているだけでしかありません。自戒をこめてそう断言し弾劾しておきます。合気道を志すなら合気道と云う偉大な体系と同じ位の矜持を持って稽古を積み重ねたいものです。
 最近養神館合気道を愛好する人とこう云った話をする機会があり、ちと感じたことがあったので書いてみました。前後して合気会のある派に属する人とも同じような話をししたものですから、尚更書いてみたくなったのであります。次の機会にその合気会のある派の人との話で感じたことを記してみようと思います。
(了)
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姥桜のかぐや姫

かなり前に読みました孤塁の人 佐川幸義
と養神館とはどのような関係にあるのでしょうか
合気道とは武道というよりなんとなく哲学?的で凡人の私に取りまして
難解な世界だった事を覚えています
やはり活字をとうし理解するのには無理があるのでしょうね
by 姥桜のかぐや姫 (2011-03-05 05:01) 

汎武

津本陽氏の小説の話は別として、佐川先生は現代合気道の基になった大東流合気柔術の総伝を受けられた方で、1998年まで存命されて大東流の指導にあたられた方であります。大東流及び合気道界ではその名前は巨星のごとくであります。現代合気道を創始された植芝盛平先生とは兄弟弟子と云う関係になられる方であしましょうか。
植芝先生の合気道も戦前の武道的な在り様と、戦後の哲理追求的な在り方とではその様相は大いに違っているようであります。養神館を創始われた塩田剛三先生は、戦前に色濃く植芝先生から薫陶を受けられた方で、自ずとその在りようは、武道としての合気道を追求された方であると認識して良いでありましょう。
図式的に云えば、
武田惣角先生(大東流中興の祖)-佐川先生、他の様々な先生方、・・・、植芝先生(合気道創始者)-塩田先生、他の様々な先生方、・・・
と云うことになるでありましょう。
また云い添えれば、合気道は戦前、戦後、どちらの在り方が正しいとか、上に位置するとかの評価はあまり意味のあるものではなく、夫々に信じる処を深く追求していくと云うことで良いのだと思います。
by 汎武 (2011-03-05 15:30) 

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