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あなたのとりこ 173 [あなたのとりこ 6 創作]

「じゃあ、木曜日の午後六時から、と云う事で決めて大丈夫かな?」
 山尾主任がまたもや夫々の顔を見渡すのでありました。皆も再度頷いて見せるのでありました。特段の異議無しというところでありますか。
「那間さんは残業しないで良いの?」
 均目さんが念のために訊くのでありました。
「大丈夫よ。仕事は遅れているけど未だ尻は先だから、どうしてもその日に残業しなければならないと云う謂れはないわ。ご心配の段は深く感謝しますけどね」
 那間裕子女史のその返事は、均目さんの心配を揶揄と取ったためでありましょう。
「出雲君は欠席になるなあ」
 袁満さんが出雲さんの事を気に懸けるのでありました。
「出雲君には、出張から帰って来てから俺の方でしっかり話すよ」
 山尾主任が請け合うのでありました。
「それに日比さんと甲斐さんには組合結成の件は内緒にして置くんですかね?」
「まあ、今の段階ではちょっと外れて貰うかな。土師尾営業部長にこの俺達の計画が漏れるのは拙いからなあ。日比さんは迂闊なところがあるからから、何かの拍子に両部長に、本人はその心算が無くてもうっかり漏らして仕舞う心配があるし、甲斐さんは向こう側の人とは思えないけど、かと云ってこちら側の人と云う感じでもないからね」
 山尾主任がまたもや皆を見渡すと、袁満さんも均目さんも那間裕子女史も、それは尤もだと云う顔付きをするのでありました。頑治さんはその辺りの人間関係の機微やら二人のパーソナリティーやらが未だ良く呑み込めていないので、無表情なのでありました。
「ええとそれから、最初の会議を開くに当たっては、喫茶店とか居酒屋とかではなく、ちゃんとした会議の体裁が取れる場所の方が良いですよ」
 横瀬氏がアドバイスするのでありました。
「じゃあ、何処か会社近くの貸会議室を借りる事にします」
「そうですね。多少お金が掛かってもその方が無難でしょうね」
 横瀬氏はその山尾主任の応えに満足そうに頷くのでありました。
「横瀬さんも出席していただけるんですか?」
 那間裕子女史が訊ねるのでありました。
「勿論です。それに組合結成までを支援するスタッフとか、皆さんの会社と似たような業態や規模の既成の組合の人を一緒に連れて来るかも知れません」
「それは何人くらいになりますか?」
 山尾主任は貸事務所の手配の関係からかそんな事を訊くのでありました。
「まあ、私も入れて三人、と云うところですかね」
「判りました。じゃあ俺達が五人で、加えて全部で八人と云う人数ですね」
「そうですね。ひょっとしたらもう一人くらい増えるかも知れませんが」
「それから、その日迄にこちらで用意する事はありますか?」
「まあ、特にはありません。具体的な作業はその会議の後と云う事になりますから」
(続)
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