お前の番だ! 532 [お前の番だ! 18 創作]
ノッポが万太郎の掌に注意を向けているのを確認して、万太郎は人差し指以外の指で握り拳を作って残った人差し指を鉤形に曲げると、それを小さく曲げ伸ばしして見せるのでありました。要するにおいでおいでをしているのであります。
この万太郎の嘗め切った仕草にノッポは逆上するのでありました。こんな嘲弄を受けて黙っているようでは人に頭抜けた自分の図体に対する裏切りと云うものであります。
ノッポは両手を前に出して万太郎に掴みかかろうとするのでありました。万太郎はノッポの右手首に手刀を添えて右回旋してそれを避けると、往なされたノッポが急ぎ向き直ろうとするところに軽い当身を鼻先に突きだして見せれば、ノッポはいきなり目の前に現れたその裏拳を避けようと、上体を仰け反らせて顔を後ろに避けるのでありました。
反ったノッポの右手首を両手で保持して空いた脇の空間に身を滑りこませると、ノッポは万太郎の背に覆いかぶさって来るのでありました。これは万太郎の狙い通りで、万太郎は急激に屈した身を延ばして肩車にノッポの体を跳ね上げるのでありました。
なかなかに重いのでありましたが、万太郎がバランスを崩す事はないのでありました。ノッポは万太郎の肩の上で大きく半回転すると頭から畳に落下するのでありました。
万太郎は床にノッポの頭が接する寸前に、持った両手に引きをかけてノッポの頭からの落下を避けるのでありましたが、これは万太郎の優恤の配慮であります。この配慮のお蔭でノッポは致命傷を負うべき頭からの落下を免れたものの、逆にそこで急速な回転がついて、背中から受け身も取れずに強か畳に叩きつけられる格好になるのでありました。
廃屋同然のオンボロ道場でありましたから、この衝撃でひょっとしたら道場が崩れ落ちるのではないかと万太郎は少々心配するのでありました。しかし如何にも大袈裟な振動を万太郎の足の裏に伝えただけで、どうやら建物は健在でありました。
ノッポは背中の強打に依って一瞬呼吸が出来なくなって、呻きながら俯せに身を返して蹲り踠くのでありました。ノッポの巨躯をあっさり投げ捨てた万太郎の手際に驚愕して、万太郎を囲む二本歯抜けになった輪が更に万太郎から遠のくのでありました。
見渡すと威治前宗家は神棚下の壁まで後退して、それ以上万太郎から遠のく事が出来ないために、恐怖に顔を歪めて、仰向けに圧し潰された蜘蛛のように壁にしっかりと貼りついているのでありました。洞甲斐氏はと云えばその場に居竦んで、体中の力が抜けたように茫然と佇立した儘、床で呻くノッポの姿をぼんやりと眺めているのでありました。
二人の幹部の普段着の方は、目の前で転がって身悶えしているノッポとその横で俯せの状態から何とか座り姿勢にはなったものの、痛めた肩をもう片方の手で労わり抑えて、前屈みに痛みに耐えているずんぐりむっくりを介抱する事もなく、万太郎から恐怖に引き攣った目を離さずに、未だジワジワと遠ざかっているのでありました。最後にダブルの白背広の方に目を向けると、ただ目線があったと云うだけでこの男は大仰な悲鳴を上げて両手を宙に泳がせて、道場玄関口まで後ろ向きにすっ飛んで逃げて行くのでありました。
その悲鳴の大きさに万太郎の方がたじろぐくらいでありました。しかしこれまたどうしたわけか背にした玄関引き戸が出し抜けにガラと開いたものだから、男は不意を突かれて同じ音量の悲鳴を再度発して、今度は前に向かって逃げ出すのでありました。
(続)
この万太郎の嘗め切った仕草にノッポは逆上するのでありました。こんな嘲弄を受けて黙っているようでは人に頭抜けた自分の図体に対する裏切りと云うものであります。
ノッポは両手を前に出して万太郎に掴みかかろうとするのでありました。万太郎はノッポの右手首に手刀を添えて右回旋してそれを避けると、往なされたノッポが急ぎ向き直ろうとするところに軽い当身を鼻先に突きだして見せれば、ノッポはいきなり目の前に現れたその裏拳を避けようと、上体を仰け反らせて顔を後ろに避けるのでありました。
反ったノッポの右手首を両手で保持して空いた脇の空間に身を滑りこませると、ノッポは万太郎の背に覆いかぶさって来るのでありました。これは万太郎の狙い通りで、万太郎は急激に屈した身を延ばして肩車にノッポの体を跳ね上げるのでありました。
なかなかに重いのでありましたが、万太郎がバランスを崩す事はないのでありました。ノッポは万太郎の肩の上で大きく半回転すると頭から畳に落下するのでありました。
万太郎は床にノッポの頭が接する寸前に、持った両手に引きをかけてノッポの頭からの落下を避けるのでありましたが、これは万太郎の優恤の配慮であります。この配慮のお蔭でノッポは致命傷を負うべき頭からの落下を免れたものの、逆にそこで急速な回転がついて、背中から受け身も取れずに強か畳に叩きつけられる格好になるのでありました。
廃屋同然のオンボロ道場でありましたから、この衝撃でひょっとしたら道場が崩れ落ちるのではないかと万太郎は少々心配するのでありました。しかし如何にも大袈裟な振動を万太郎の足の裏に伝えただけで、どうやら建物は健在でありました。
ノッポは背中の強打に依って一瞬呼吸が出来なくなって、呻きながら俯せに身を返して蹲り踠くのでありました。ノッポの巨躯をあっさり投げ捨てた万太郎の手際に驚愕して、万太郎を囲む二本歯抜けになった輪が更に万太郎から遠のくのでありました。
見渡すと威治前宗家は神棚下の壁まで後退して、それ以上万太郎から遠のく事が出来ないために、恐怖に顔を歪めて、仰向けに圧し潰された蜘蛛のように壁にしっかりと貼りついているのでありました。洞甲斐氏はと云えばその場に居竦んで、体中の力が抜けたように茫然と佇立した儘、床で呻くノッポの姿をぼんやりと眺めているのでありました。
二人の幹部の普段着の方は、目の前で転がって身悶えしているノッポとその横で俯せの状態から何とか座り姿勢にはなったものの、痛めた肩をもう片方の手で労わり抑えて、前屈みに痛みに耐えているずんぐりむっくりを介抱する事もなく、万太郎から恐怖に引き攣った目を離さずに、未だジワジワと遠ざかっているのでありました。最後にダブルの白背広の方に目を向けると、ただ目線があったと云うだけでこの男は大仰な悲鳴を上げて両手を宙に泳がせて、道場玄関口まで後ろ向きにすっ飛んで逃げて行くのでありました。
その悲鳴の大きさに万太郎の方がたじろぐくらいでありました。しかしこれまたどうしたわけか背にした玄関引き戸が出し抜けにガラと開いたものだから、男は不意を突かれて同じ音量の悲鳴を再度発して、今度は前に向かって逃げ出すのでありました。
(続)
新年明けましておめでとう御座います。
穏やかで輝かしい新年を迎える事ができました。
本年も昨年同様宜しくお願いします。
by yam (2017-01-01 10:11)
yamさん、昨年はお世話になりました。
本年も宜しくお願い致します。
by 汎武 (2017-01-01 12:56)
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
by いっぷく (2017-01-01 20:02)
いっぷくさん、新年おめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
by 汎武 (2017-01-02 09:01)
あけましておめでとうございます。
佳いお正月をお迎えになったことと思います。
本年も相変わらずご厚情の程よろしくお願い致します。
by ネオ・アッキー (2017-01-03 03:40)
ネオ・アッキーさん、あけましておめでとうございます。
こちらこそ本年も宜しくお願い致します。
by 汎武 (2017-01-03 08:32)