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お前の番だ! 425 [お前の番だ! 15 創作]

 寄敷範士がそんな疑問を呈するのでありました。
「柔道の試合は組んでから始まるので、突き蹴りが試合に持ちこまれると、なかなかその特性を発揮出来ないだろうと思われます。それに寝技も制限されていたようですし」
 来間がそう解説するのでありました。
「組形の見事さを競う、と云う競技の発想はなかったのかな?」
 是路総士が来間に問うのでありました。
「いや、そのような事は思いもつかなかったでしょう」
 鳥枝範士が代わりに応えるのでありました。「第一、威治を始めとして組形の見事さを判定できる者が興堂流には誰もいないでしょうし」
「ああそうですか。で、それなら興堂流宗家である威治君自身は、その選手権大会とやらで、役回りとしては審判か何かをしたのでしょうかな?」
 是路総士が花司馬教士の方に目線を遣りながら訊くのでありました。
「いえ、大会委員長と云う名目で、会長と一緒に本部席で座っていただけだそうです。まあ、最後に宗家演武と云う事で板場と堂下を相手に組形演武を披露したようですが」
「まさか選手として試合に出て恥を曝すわけも行かず、審判を務めるような能もないから、本郡席にふんぞり返っているしか芸がなかったのでしょうな。最後に組形演武をしたのは、取ってつけたようではあるものの宗家としての威厳を示すためでしょうかな」
 鳥枝範士がそう云って鼻を鳴らすのでありました。
「横着者で億劫がりで、しかも見栄っ張りの仕事はないでしょうな、そのような大会では。本部席に祭り上げられてちやほやされているしか、確かに出来る事はなさそうだ」
 寄敷範士もなかなか手厳しいのでありました。
「それから、試合ルールが手前味噌過ぎた、と云う批判があります」
 花司馬教士が少し話しの舳先を変えるのでありまいた。「顔面への打撃とか下腹部への打撃がダメなのは判りますが、ボクシングで云うクリンチみたいな状況になると、そこでも打撃を繰り出してはダメだったそうです」
「それじゃあ組みあって仕舞うと、後はどう推移するのだ?」
 寄敷範士が不思議そうな顔をするのでありました。
「強引に投げるか、組あった儘両者が倒れるかですね。それからブレイクと云う事になるのでしょう。寝技は制限されていますから」
「要するにクリンチすれば打撃を蒙る危険はなくて、倒れこんだらその後に、柔道の関節技とか絞め技にも推移しないと云うわけだな」
「そうですね」
「つまり柔道や空手とかの異種格闘技の連中の参加を呼びかけながら、そう云う連中の得意とする試合展開を封じる、自派に好都合なルールと云うのだな?」
「まあ、興堂流の大会であるのに、興堂流の門下でもないヤツに優勝を攫われないための予防と云うわけだ。ま、そう云う手練手管は、良く常套手段として使われはするか」
 鳥枝範士がまたも皮肉な笑いを頬に浮かべるのでありました。
(続)
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