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お前の番だ! 385 [お前の番だ! 13 創作]

「でも興堂派を離れた支部が挙ってこちらに移ると云うような事態になれば、まるで総本部が興堂派のゴタゴタに乗じて、あちらの支部に秘かにコンタクトを取って指嗾して、ごっそり横奪したと云う風に興堂派は勘繰るのではないでしょうか?」
 あゆみがありそうな懸念を表明するのでありました。
「いや、これはあくまでも興堂派内での反乱現象だ」
 鳥枝範士は無表情でそう云い放つのでありました。
「それはそうでしょうが、しかし興堂派を離れた支部が悉くこちらに移るとなると、裏で総本部が策動したと勘繰られる恐れもあると思うのですが?」
「興堂派が自ら招いた支部の離反であり、その支部が我が総本部に自分達の方から頼ってきたと云うのが、この事態の加減のない見取り図でもあり真相でもある。依って、我々には何の後ろ暗いところもないし、あらぬ云いがかりをつけられる筋あいもない」
「そうには違いないでしょうけど、そうすんなりと興堂派が受け止めるでしょうか?」
「興堂派が受け止めなくとも、世間の大方はそう納得する」
 鳥枝範士はあくまでも強弁するのでありました。「それに興堂派、と云うよりは威治に幾ら恨まれようとも、それはお門違いの恨みつらみと云うものだと、こちらは毅然として云い放っておけば良い。どこまでも理は向こうにはない」
「威治筆頭範士は恐れるに足らずとも、後ろにいる会長が黙っているでしょうか?」
 これは万太郎の疑問でありました。
「曲者ではあるが、アレは娑婆での自分の評判を神経質に気にする政治の世界の人間だ。理のないところで無理を通そうとたら、逆にそれ相応の傷を自分が受けると云うところは心得ているだろうよ。だからこの件ではそう好き勝手にふる舞う事は出来まい」
「しかし曲者で、政界の寝業師の異名を持つのですから、無理を無理と見せずに押し通すだけの、妙法のあれこれを心得ているのではないでしょうか?」
「ま、その妙法とやらが有るのなら、お手並み拝見と云うところだな。何やら如何わしい手練手管を弄しようとするなら、こっちにもヤツに対抗できるような政治家の伝はある。噂によればアレも金絡みで相当際どい辺りをうろついてきた男のようだから、その辺りの弱みを嗅ぎつけている、アレに好感を持たない輩もウジャウジャいるだろうからな」
 鳥枝範士は万太郎に自信たっぷりに笑んで見せるのでありました。これは鳥枝範士の、鳥枝建設会長と云う実業家の口が云わしめるところの自信の表明でありましょう。
 確かに鳥枝建設を現在の規模まで大きくしてきたのは、この万太郎の目の前に居る鳥枝範士でありました。でありますから鳥枝範士は、それは興堂派会長に匹敵するような、いやひょっとしたらそれ以上の大物政治家の伝も、屹度持っているのでありましょうし、この辺りに関しては万太郎の窺い知れない、鳥枝範士のもう一つの顔でありますか。
「総士先生は、興堂派の支部が挙ってこちらに移って来ると云うような事になったら、如何がご対処されるおつもりなのでしょう?」
 万太郎は是路総士に言葉を向けるのでありました。
「そうだな、・・・」
(続)
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