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お前の番だ! 384 [お前の番だ! 13 創作]

 あゆみはそれから程なくして小金井の出張指導から帰ってくるのでありました。万太郎とあゆみはすぐに師範控えの間に向かうのでありました。
「二人共腹が減っているだろうが、まあ、済まんが暫く我慢しろ」
 鳥枝範士が別に済まなさそうにでもなく、座敷に入った二人に声をかけるのでありましたが、あゆみは帰ったばかりで食事をしていないし、万太郎もあゆみが帰ってから来間と三人でと思っていたから、未だ夕飯は済ましていないのでありました。因みに是路総士と鳥枝範士、それに寄敷範士は来客と一緒に出前の寿司を既に食していたのでありました。
「興堂派の広島支部が、支部ごとウチに所属を鞍替えする事になった」
 鳥枝範士が先ずそう告げるのでありました。これは万太郎も、須地賀支部長がこの日総本部を来訪した時点で、既に予測していた事でありました。
「その手続きのため、今日いらしたのですか?」
「いや、正式な登録申請は未だだ。今日はその打診と云うところだな」
「第一、筋から云えば、先ず興堂派に離脱を認められてから後だな、こちらへ入るのは」
 寄敷範士が後を続けるのでありました。
「ああそれで先程、須地賀支部長が一旦広島に戻るけど、また近々書面を携えて上京する、と玄関でおっしゃっていたのですね?」
「そう云う事だ」
 鳥枝範士が肯うのでありました。
「その書面と云うのが、興堂派への離脱届けと云うわけですか?」
「そう云う事だ」
 鳥枝範士は同じ言葉を繰り返すのでありました。
「いよいよ予想していた激震が、興堂派に起きると云う事ですか?」
 あゆみが訊くと今度は鳥枝範士は無言の儘、しかつめ顔で頷くのでありました。
「須地賀さんの云うところに依れば、広島支部と岡山支部、それに徳島支部の三支部が統一して行動を起こす了見のようだな」
 寄敷範士が具体的な補足をするのでありました。
「三支部が足並みを揃えて、ですか?」
 あゆみが少し驚くのでありました。
「そうだ。それに広島支部が頭抜けて大所帯だが、岡山も徳島もそこそこ大きな支部ではあるから、中国四国地方の他の支部にも同調するような動きが出るだろうと云う話しだ」
「それだけではなく、三支部が離脱したと云う消息を聞けば、九州も関西にある支部にも、いや恐らく、日本全国にある支部にも離脱の動きが急激に波及するかも知れんな」
 今度は鳥枝範士が補言するのでありました。
「それは、興堂派の存亡に関わるような事態、と云う事ではないでしょうか?」
 万太郎は事の深刻さを思って、少しばかりたじろぎの声になるのでありました。
「そう云っても過言ではなかろうな」
 鳥枝範士は瞑目して、今度は二度も三度も頷くのでありました。
(続)
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