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もうじやのたわむれ 67 [もうじやのたわむれ 3 創作]

「ま、そう云う事になった折には是非」
 拙生は笑いながら云うのでありました。
「ま、ラグビーの方はさて置いて、ユーシーランドもオーシテクレヤと同じで、観光と農業や牧畜業が盛んです。羊が一杯いますよ」
「当然周りが水に囲まれておりますから、観光と農業や牧畜業ばかりではなくて漁業も盛んです。それにオーシテクレヤもユーシーランドも、工業も商業も金融取引なんかに関しても先進地と云えます。都市も、河岸に沿って大きな港湾設備を持つ街が多くありますし」
 記録官の紹介には不備があると思ったのか、これは審問官が口を挟むのでありました。
「ああ、その通りです。勿論この二島は近代化も果たされております」
 記録官が慌ててつけ足すのでありました。「オーシテクレヤ島には霊口が二百万を超える都市が二つありますし、ユーシーランド島にも都市域霊口が五十万に喃々とする処があります。夫々生活インフラも整っていて、住みよい処ですよ」
「他の島々はどうでしょうかね?」
 拙生は聞くのでありました。
「他の島は小さな島が多くて、小規模な農業とか漁業、それに観光なんかが主要な産業と云う事になるでしょうか。しかし他島との船便は頻繁にありますし、ま、美しい島の景観とかゆったりした暮らしぶりとか、そう云う面では結構人気の高い居住地ですよ」
「大小傑地方の知事さんは何方で?」
「クックさんと云う名前の方です」
「ああ、矢張りね」
 拙生は片側の頬に笑いを浮かべるのでありました。「その方は以前、海賊かなにかをされていたとか云われるのではないでしょうか?」
「いや海賊なんかされておりません。それに、因みにですが、太平江は河川ですので、それを云うなら、海賊、ではなくて、河賊、でしょうね」
「ああ、確かに。失礼をしました」
 拙生は軽くお辞儀をするのでありました。
「クックさんは商船の船長をされておりました。日焼けした赤ら顔で、髭が見事で、今でも何処に出るにも船長服を着用されて、なかなか押し出しの良い方でいらっしゃいます。政治の方もかなりの鉤手、いや、やり手で、大小傑地方では大いに人気があります。もう知事を四期務めておられます。商船の船長をされる前は大小傑地方の河軍士官でいらして、その後河洋探検家とか河図制作会社の社長さんをされていたと云う経歴がおありです」
「なんか、海軍が河軍で、海洋探検家が河洋探検家、それに海図が河図と聞くと、失礼ながらちょっと小ぢんまりした感じに聞こえて仕舞いますね、娑婆の感覚では」
「そんな事はありません。前に話したと思いますが、三途の川ですら娑婆の中国にある長江の約四十倍の川幅と長さがありますし、太平江の川幅はその三途の川のそのまた四十倍です。前に話しに出た大西江にしたって二十倍はありますから、途轍もなく広いのです。河軍とか河洋とか河図とかの語感から受ける印象で、そんなに侮って貰っては困ります」
(続)
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