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腹痛のはなしⅠ [時々の随想など 雑文]

 近来、頓に夜中に腹痛に襲われて目を覚ますことがあるのであります。この腹痛は激痛という程ではなくて、鳩尾辺りがシクシクと不快に収縮するような感じで、それでもそこそこ痛いは痛いものでありますから安眠を妨げられるのであります。
 夕食が十時頃と遅いものでありますからそれも影響しているのでありましょうか。拙生の胃の就労時間が終了した後に、この遅い夕食で胃に残業を強いるものでありますから、胃がサボタージュして摂取した食物が滞留してしまい、それが原因で不具合が起こっているのかも知れないとは素人考えでありますが、まあ、なにやらそんな風に思えるのであります。
 夕食後暫く経って、或いは食事の最終段階辺りで微少ながら前触れのような不快感を感知すると、その後に決まって件の苦痛の来襲であります。寝る頃には立派な腹痛に成長している場合もあれば、寝入るには不都合がなかった程度のものが一眠りの後に確然たる痛みとなって拙生の腹の中で屹立し、夢から現に拙生を引き摺り戻すような場合もあります。
 夕食の時間はもう二十年来夜の十時辺りと決まっていて、以前はそんなに頻繁な腹痛に悩まされたことはなかったのでありました。食事の内容にしても食事時間と同様に然程に変化はしていないはずでありますが、しかしここに来て頻発するようになったのであります。一頃は三日置きとか、腹痛の日が三夜に腹痛ならぬ日が四夜と云う周期の時もありましたか。しかも厄介なことに、どう云うタイミングで、或いはなにを食せばこの腹痛が発生するのか法則性がはっきり判らないのであります。拙生は忽然と現れ出るこの腹痛のために、睡眠時間の減少に大いに参るのでありました。
 うつ伏せになって鳩尾を圧迫してみたり、仰向けで腹を摩り続けたり軽打を繰り返したりと、なんとか気を紛らわしながら鎮静するのを持つのでありましたが、漸くに痛みの高波が凪に変わる頃には、もう外は白やかに物の形も見分けがつく頃となり、鳥の囀りも聞こえ始めるのでありました。ほんの僅かまどろむと、もう起床時間であります。
 これはひょっとしたら大病の前兆ならんと恐怖して医師の診断を仰ぐものの、医師もウーンと唸りを発するばかりで、取り立てて何処とて顕著な不具合を見出せない様子に、こちらもそんな義理はないものの、なにやら不必要に師の手を煩わせたような心持ちになって恐縮したりするのでありました。恐縮序でに、然らば拙生のこの腹痛の因は那辺に在り也と問えば、医師は唇の端を薄ら笑いに動かして「まあ、ストレスと老化現象でしょうかなあ」と、なにやら恐縮をして損をしたような言葉が返って来るのでありました。
 ストレスは置くとして、老化現象と一言で片づけられれば、もう打つ手なしと引導を渡されたような気分であります。而も老化現象は生物としてこの世に在る以上止める能わざるものでありますから、これから益々腹痛の頻度も程度も酷くなりますぜと、診療代を払って態々脅かされに行ってきたようなものであります。
 まあしかし確かに、それが真ならんと云うところでもありましょうか。幸いにも頻度も程度も未だ増大をしている風はありませんし、どちらかと云うと今は減少傾向にあるような気もするのであります。それは屹度老化が益々進んで鈍くなったからと云われれば、拙生は憮然たる表情を披露するしかないのでありますが。
(続)
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