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枯葉の髪飾りLⅩⅩⅡ [枯葉の髪飾り 3 創作]

 吉岡佳世の家には、大学が休みに入ったためか、彼女のお兄さんが居るのでありました。
「おう、いらっしゃい」
 吉岡佳世のお兄さんは上がりこんできた拙生と隅田に炬燵に入ったまま云うのでありました。彼女の家の居間は何時も置いてある座卓が片づけられて、同じくらいの大きさの長方形をした炬燵が出してあるのでありました。窓の所にはストーブが置いてあって、居間の中はとても温かでありました。
「何時、京都から帰ってこらしたとですか?」
 拙生はお兄さんに挨拶の積もりで頭を下げながら聞きます。
「うん、昨日。なんか話に聞いたら、今日はクリスマスパーティーばするて云うことけん、どうせオイも行く所もなかし、仲間に入れてもらおうておもうてくさ。よかやろうか?」
「ええ、それはもう。賑やかな方がよかけん」
 そう応えながら拙生は島田の、チキンは二つくらい余計に買っておいた方がよかろうと云う指示の、見事なまでに的確であったことに感心などするのでありました。
「こんなのば買うてきましたけん」
 台所から出てきた吉岡佳世のお母さんに隅田が手に持った紙袋を渡すのでありました。
「済まんねえ、食料の調達までして貰うて」
 吉岡佳世のお母さんはそう云いながらその紙袋を受け取るのでありました。
「何、買ってきたと?」
 吉岡佳世がそう云ってお母さんの持つ紙袋の中を覗きこみます。
「七面鳥、じゃなくて鶏の腿と、あとポテトサラダとリンゴと、鰯の天ぷらにスボ蒲鉾」
 拙生が説明します。
「マカロニサラダの方が、よかったやろうか?」
 隅田が心配そうに吉岡佳世にそう尋ねているのでありました。
「安田君と島田さんは?」
 吉岡佳世のお母さんがそう拙生に聞きます。
「はい、クリスマスの飾りつけとか後、ほら、紐ば引っ張ってパンて音ば出すやつ」
「クラッカー?」
 吉岡佳世が云います。
「そうそう、そのクラッカーとかば買いに戸尾市場まで行ったです」
「戸尾市場までね。態々申しわけなかごたるねえ」
「いや、どうせ本人達が好きでしとるとけんが、問題なかです」
 隅田がお母さんの恐縮を掃うためにそう云うのでありました。
「二人で、買い物しながら、喧嘩してないやろうか?」
 吉岡佳世が心配顔で云います。
「しとるやろう、屹度。ばってん島田が戸尾市場に買い物に行くて云うた時、安田がすぐに、そんならオイがついて行こうかねて云うたとやもんね」
 隅田がそんな事情説明をするのでありました。
(続)
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