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苛立つ汎武 [時々の随想など 雑文]

 歳のせいか、万事に苛立つ自分を感じるのであります。道を歩けば前を行く数人連れの高校生が横に並んでふざけながら歩く姿に苛立ち、買い物カートを引いた初老の女性がどう云うつもりか突然道の真ん中で立ち止まり、すぐ後ろを歩く拙生とぶつかりそうになってもなんの意も用いない様子に苛立ち、押しボタン式の横断歩道でこちらがすでに横断ボタンを押しているにも関わらず、道の向こう側でそれでもまだ苛立たしげに何度もボタンを押し続ける中年サラリーマンに苛立ち、原つきバイクに乗ったお兄ちゃんがふらふらこちらに突進してくる様子に苛立ち、カーステレオの音がこれ見よがしに音漏れしているスモークガラスの派手な自動車がすぐ横を失踪して行くのに苛立ち、横断歩道の真ん中まで進入して停車し、信号待ちしているやけに大柄の四輪駆動車を目にして、これまた大いに苛立つのであります。
 待っているエレベーターが順調に拙生の居る階へ降下してきていたのに、ある階で突然止って動かなくなったことに苛立ち、コンビニに入ろうとガラス扉を開いたら中にいた御仁が、こちらが扉を開くのを待っていたかのような風情で、先に堂々と我が前を出て行くその図々しさに苛立ち、電車に乗れば、カバンや大きな袋を座席に置いて前に立つ人に気をとめることなく、携帯電話を夢中になって操作している女子高校生に苛立ち、大きな荷物を通路上にいくつも置いて、その荷物を囲むようにだらしなく立って傍若無人な笑い声などたてて話しする、どこぞの大学の運動部員の一団に苛立ち、電車が停車して扉が開くと同時に降りようとするこちらが目に入らないかのように、すぐさま乗り込んでくる作業服を着た大柄な男のふてぶてしげな仏頂面に苛立ち、発車しようとする電車に是が非でも乗らんとして、前の人を突き飛ばしそうな勢いで階段を駆け登ってくる若いサラリーマンに苛立つのであります。
 嗚呼やれやれ、嫌な世情だ風俗だと、件の電車に乗り込んでくる作業服の大柄な男よりも尚一層の仏頂面で、そんな光景をやり過ごすのではありますが、こんな些事にいちいち目くじら立てている己が矮小さにも、当然これまた苛立つのであります。それにまた、同じような振る舞いで、こちらがが他人様に不快の念を与えていることもあるに違いないのです。しかし、さて、さりながら、この「に苛立つ」と云う言葉を「を楽しむ」と置き換えても、あながち間違った心情ではないなと最近なんとなく気づいたのであります。良きことも悪しきことも、自分のことも他人のことも取り混ぜてこの世の <味わい> のようなものかと云う気も、ちっとはするようになったのであります。拙生も大分悟ったものであります。こりゃひょっとして、先が短いと云うことでありましょうか。
(了)
タグ:苛々 鈍感
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