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あなたのとりこ 725 [あなたのとりこ 25 創作]

「スポーツトレーナーとか医療補助とかの学校だよ」
「具体的にはどう云う事を学ぶんですか?」
 スポーツトレーナーと云うのは何となくどう云う事を学ぶのか想像出来るのでありましたが、医療補助と云うのが漠然としていて、一体何を習得出来るのか、今一つ曖昧でよくつかめなかったので頑治さんはそう聞くのでありました。
「まあ、三か月だから大した事は学べないだろうけどね」
 袁満さんはこう応えるのみで具体的な内容は云わないのでありました。実は袁満さんも未だそれ程よく理解してはいないのかも知れません。しかし学校に通う事に然程の期待を抱いていないようであるのは理解出来るのでありました。まあ、職安が紹介してくれるのでありますから、そんなに怪し気な事を教える学校ではないでありましょうけれど。
「学費とかはどうなるんですか?」
「職安の紹介だから少しは安くなるらしいけどね。まあ、貯金で何とかなるだろう。暫くの就職猶予期間と云う事で、学生身分に託けて、少しのんびり骨休めと云う寸法だよ」
「三か月したら病院とかスポーツ施設で働けるんですか?」
「どうなんだろう。実は卒業後の事に関しては俺も未だ良くは知らないんだよ」
「ふうん、そうですか」
「まあその学校に通うのは、一応就職活動をちゃんとしていると云う職安への弁解のようなものだから、俺としてもそんなに乗り気だと云う訳じゃないしね」
 今の時点であれこれこの話しをこれ以上進めるのは無意味のようでありましたから、頑治さんはここいら辺で話題を変える事にするのでありました。
「甲斐さんとは上手くいっているんですか?」
「あああ、甲斐さんね。まあ、ぼちぼちと」
 こう質問されて、電話の向こうの袁満さんの顔がニヤけるのが判るのでありました。と云う事は、取り敢えず順調なのでありましょう。
「結婚とか、そう云う話しは未だ出ないんですか?」
「まさか、そんなのは全然ないよ。時々逢って食事したり、コーヒーを飲んだりしているくらいだからね。会社に居た頃と然して変わらないよ」
「まあ、徐々の進展を期待していますよ」
「いや、その甲斐さんだけど・・・」
 袁満さんはここで急にニヤけた語調を改めるのでありました。「三日前に贈答社を辞めたんだよ。まあ、辞めさせられたと云うのが正しいかな」
「え、そうなんですか?」
 頑治さんは驚いたように云うのでありましたが、実はそんなに寝耳に水、と云う事ではないのでありました。早晩そうなるであろう事は予想の内でありましたから。

 袁満さんの口調が陰鬱な感じに変わるのでありました。
「社長の企みが着々と実現していると云ったところかな」
(続)
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