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あなたのとりこ 256 [あなたのとりこ 9 創作]

 均目さんが袁満さんの退路をやんわりと断つのでありました。
「でも、山尾主任がここで抜けるなんて思いもしなかったし、俺は元々そんな風に順送りに委員長になるなんて考えもせずに副委員長を引き受けたんだけど」
「それは色んな若しもの事態を考えなかった袁満君の迂闊よ」
 那間裕子女史が潔くない袁満さんに少し苛々したような口調で云うのでありました。
「そうは云われても、なあ。・・・」
「じゃあ、皆の決を採りましょう」
 均目さんも往生際の悪い袁満さんに少し焦れたようでありました。「出雲君は袁満さんが新しい委員長になる事に賛成かい、反対かい?」
「まあ、袁満さんで良いんじゃないっスか」
 出雲さんは袁満さんの心根を憚ってか、大賛成という訳ではないけれど、かと云って反対ではないと云った曖昧さを口調に籠めるのでありました。
「唐目君はどうだい?」
「袁満さんが委員長になるのが順当と云えば順当かなあ」
「那間さんは?」
「袁満君で問題無いと思うわ」
「俺も賛成だな」
 那間裕子女史の返答に頷いてから均目さんが最後に意志表明するのでありました。「これで当の袁満さんを除いて全会一致ですよ」
 均目さんが詰め寄るのでありました。
「俺なんかより弁の立つ均目君辺りが適任だと思うけどなあ」
 袁満さんはここに来て未だ気後れを表明しているのでありましたが、他の四人がそれを許してくれそうにない気配である事は重々判っているような口調ではありましたか。
「大丈夫ですよ。四人でしっかり支えますから」
 均目さんが受諾表明を迫るのでありました。「こうなったらもう、四の五の云わないで、きっぱりと引き受けてくださいよ、袁満さん」
 何となく有無を云わさない迫り方であります。下手をして自分にお鉢が回って来るのを避ける秘かな魂胆から、均目さんは少々強引にここで袁満さんに委員長就任を迫っているのだろうと、均目さんの様子を見ながら頑治さんは推察するのでありました。
「仕様が無いかなあ」
 袁満さんはようやく諦めたようでありました。「でも委員長になっても、何をやったら良いのか俺はさっぱり判らないんだからね」
「大丈夫ですよ。何もかも袁満さんに責任を押し付けるような真似はしませんよ。俺達全員でちゃんと支えます。一応の体裁として委員長と云う役目が必要なんだから」
 均目さんの口調はここで懇願の色を濃くするのでありました。
「じゃあ判ったよ。体裁として一応俺が委員長になるよ」
「よろしくお願いします」
(続)
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