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あなたのとりこ 184 [あなたのとりこ 7 創作]

「何でまた俺が副委員長なんですか?」
 袁満さんが少し口を尖らせるのでありました。そんな大それた名前の役職は荷が重いじゃないかと云った顔付きであります。「俺は出張がちだから副委員長に任命されてもその仕事をちゃんと果たせないんじゃないかな、何の仕事をするのか良く判らないけど」
「いや、それだからこそ副委員長になって貰う心算なんだよ」
 山尾主任が説明するのでました。「大概は会社に居る俺が委員長だから、その補助的役割りと云うところで、副委員長だよ。それに制作と営業から正副委員長を出すのが落ち着きが良いと思うからさあ。因みに年齢と就業年数の長さから俺が委員長と云う事だよ。俺が委員長になる事に反対意見が多いなら、勿論俺はその職に就かない心算だけど」
「良いんじゃないの、山尾さんが委員長で」
 那間裕子女史が山尾主任の案に賛同するのでありました。これは自分がそんなご大層な役職を引き受けるのはまっぴらご免蒙りたいと云う逃避的魂胆からでありましょう。
「じゃあ、那間さんが書記と云うのもOKだね?」
 山尾主任が空かさず訊くのでありました、
「書記、ねえ。何をすればいいの?」
「その都度、会議の議事録を取るのが第一です。それから多分お金の管理ですね」
 横瀬氏が山尾主任の代わりに解説するのでありました。
「お金の管理もあたしがやるの?」
 那間裕子女史は書記の仕事にそんなのがあると云うのが解せないようでありました。それは会計と云う役職を設けてそちらでやれば良いだろうと云う了見でありましょう。
「まあ、直接的な書記の仕事ではないけれど、少人数だから兼務と云う事で」
 これは山尾主任が云うのでありました。
「あたしが兼務するより、執行委員が三人もいるんだから、その内の一人を会計と云う役職にすれば良いじゃないの。大体あたしは自分のお金の管理もルーズなんだからね」
「いや、執行委員はあれこれ細々とした用事をやって貰わないといけないから」
「その、細々とした用事、と云うのは何ですか?」
 均目さんが質問を割り込ませるのでありました。
「会議の会場確保とか飲食物の手配とか、若し必要なら会議用とかのプラカードや垂れ幕の作成とか、全総連本部とか他の単組への使い走りとか、ま、色々」
 山尾主任は一々指を折りながらそんな説明をするのでありました。
「ふうん。雑用係と云う事ですね」
「まあ、そう云えばそうかな」
「成程、そう云う三下の仕事は那間さんにやらせる訳にはいかないか」
 均目さんはあっさりと妙な納得の仕方をするのでありました。
「唐目君、会計の仕事、やってくれない?」
 那間裕子女史が急に頑治さんにそう提案するのでありました。
「え、俺が、ですか?」
(続)
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