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あなたのとりこ 683 [あなたのとりこ 23 創作]

 頑治さんは受け取ってやや丁寧にお辞儀をするのでありました。
「いやいや、缶コーヒーくらいでそんな風に礼を云われたら返ってまごまごするよ」
 袁満さんは大仰に掌を横に振るのでありました。
「その後、全総連からは何も云ってこないですか?」
「うん、今のところ」
「もう決着したと云う事でしょうかね」
「そうあって欲しいものだけど」
 袁満さんとしてもまた呼び出されたりするのはご免蒙りたいでありましょう。
「この儘退職まで、すんなり縁切りとなると良いですけどね」
「こっちの意志が退職と決まっているから、向うとしてもそれ以上どうしようもないだろうなあ。まあ、均目君に依ると、一度取り憑かれたらなかなか縁を切らせてくれない、悪霊みたいに執拗な政党がバックに付いていると云う事らしいけど」
 袁満さんも均目さんにしつこくそう云って脅かされているようであります。均目さんのこの手の執拗さなんと云うものも、全総連とかあの政党に充分匹敵するくらい、なかなかなものだと云えるでありましょうか。
「ところで土師尾常務は、例に依って今日も直行直帰ですかね」
 頑治さんは話題を変えるのでありました。
「多分そうだろうね。上がってみたらひょっとして事務所に居るかも知れないけど」
 袁満さんが、それは先ずないだろうと云う風の語調で云うのでありました。
「社員が四人辞めて、後には甲斐さんと日比課長だけしか残らないとなっても、当人は相変わらず無責任で気儘な仕事振りと云う訳ですかね」
「まあ、どんな事になろうと、端から役員としての自覚も責任感も期待出来ない人なんだから、結局はそんなところだろう」
 袁満さんは軽侮を露骨にするのでありました。
「事ここに到っても、社長はそれを許しているんでしょうかね」
「社長にしても、ウチの会社を何とかしようとか云う意欲はもうすっかり失せて仕舞ったようだし、どうなろうと構やしないと云う気持ちだろう」
「結局、贈答社を整理する心算なんでしょうかね」
「まあ、そんなところだろう」
 袁満さんは鼻を鳴らすのでありました。「日比さんも甲斐さんも早晩この会社を辞めさせられるんだろうし、会社を整理した後で残った資産を土師尾常務に文句を云われない程度分け与えて、それで目出度く一件落着させると云う肚だと思うよ」
「土師尾常務はそれで納得するんでしょうかね」
「まあ、土師尾常務と社長の間で、手切れ金を幾ら寄越せだの、そんなに無茶に吹っ掛けるなだのと、醜い争いが起こる事になるんだろうな」
「おぞましいですね、それは」
 頑治さんは冗談半分で大仰に身震いして見せるのでありました。
(続)

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