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あなたのとりこ 682 [あなたのとりこ 23 創作]

 とは云っても、入社早々に結構大々的に倉庫の整理整頓はしていたし、その後もむやみに倉庫内が荒れないように気を付けていたので、後は少々散らかっていた材料類や商品類を識別に従って片付けるだけでありました。庫内の美化にも気を付けていたし、前の駐車場の清掃も日課にしていたから、そう大した手間もかけずに済みそうであります。
 午後三時を過ぎた頃再び袁満さんが顔を出すのでありました。袁満さんは頑治さんが倉庫整理に勤しんでいる姿を見て少し感心するのでありました。
「唐目君も律義なものだなあ」
「どうせならあれこれ後腐れなく辞めたいですからね」
「立つ鳥跡を濁さず、と云う訳ね」
「まあ、そんな感じですかね」
「俺も手伝おうか?」
「袁満さんは上での後片付けとか仕事の締め括りもあるでしょうし、ここは気にしないで大丈夫ですよ。俺一人で充分出来ますから」
 頑治さんはお辞儀しながら掌を横に振って見せるのでありました。
「いやまあ、商品の出し入れなんかで俺も倉庫を使っていたから、手伝うよ。それに第一営業スペースに甲斐さんと二人でいるのは何となく気が重いし」
 袁満さんは、察しろよ、とでもいうように苦笑うのでありました。
「ええと、何か用があって倉庫に下りて来たんじゃないんですか?」
「いや今も云ったように、甲斐さんと二人で上の営業スペースに居るのが気まずいから、ちょっと息抜きの心算で下りて来たんだよ」
 そう云う事なら何か倉庫整理を手伝って貰っても良いかなと、頑治さんは得心するのでありました。袁満さんも辞めるとなってもなかなか気が休まらないようであります。
「じゃあ、通路に出ている商品の段ボールを棚に片付けて貰いましょうかね」
「ほいきた。お安いご用だよ」
 袁満さんはどこか嬉々とした風情で早速仕事にかかるのでありました。その後も袁満さんはなかなか上の事務所に戻らず、倉庫整理とは無関係な、頑治さんの当日発送する荷物の荷造りまで手伝ってくれるのでありました。
「そろそろ四時半か」
 袁満さんは大方の荷作りが終わると腕時計を見て云うのでありました。「ちょっと一休みに缶コーヒーでも買ってくるか。奢るよ」
「いやいや、手伝って貰ったんだから俺の方が奢りますよ」
「そんな事は別に良いし、返って俺の方が助かったから、俺が奢るよ」
「・・・そうですか。済みませんね」
 ここでどっちが奢るか云い合っていても始まらないから、頑治さんは袁満さんの申し出を不承々々ながら受ける事にするのでありました。袁満さんは頷いて倉庫を出て行って、近くの自動販売機で缶コーヒーを二本買ってくるのでありました。
「どうも有難うございます」
(続)
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