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あなたのとりこ 566 [あなたのとりこ 19 創作]

「まあ、どうしたい、とか云う具体的な話しは特には無かったけど」
「しかし何か変じゃないですか。那間さんの事を単にあれこれ腐したり批判するだけの目的で、当人でもない袁満さんを何で態々喫茶店に連れて行ったのですかねえ?」
「それは良く判らないけど、俺が組合の委員長、だからかなあ」
 袁満さんは腕組みして首を傾げるのでありました。「要するに、俺の方から那間さんに注意をして欲しいと云う事なのかも知れないな」
「そう云われたんですか?」
「いや、那間さんの不謹慎を論うだけで、俺に特段どうしろとは云わなかったけど」
「どうして態々袁満さんに向かって、那間さんの行状の問題を論っているのかとか、土師尾常務のそう云う行為を不審に思わなかったんですか?」
「うんまあ、思わない事もなかったけど。・・・」
 袁満さんは口を尖らすのでありました。「俺としては一刻でも早くその場から解放されたかったものだからね。それを訊く事で話しが長くなるのはご免だったし」
「まあ、袁満さんの気持ちは判りますが、しかし何とも変じゃないですか」
「云われてみれば確かに、変は変だけど」
 袁満さんはばつが悪そうに下を向くのでありました。
「袁満さんに那間さんの態度の問題を詰って見せて、それでいて袁満さんにその辺への対処を何も要求しないと云うのは、つまりこれから秘かにやろうと考えている土師尾常務の何事かの策謀の布石、と云う風に考えられるでしょうかね」
「まあ確かにね」
 袁満さんは頷くのでありました。「でも、それはどう云った策謀なんだろうか?」
「考えられるのは、こう云った不良社員は会社を辞めて貰う方が良いと云う考えを、組合の委員長である袁満さんにも共有して貰いたいと云うところですかねえ」
「それは出来ない相談だ」
 袁満さんは首を横に何度も振るのでありました。
「しかし土師尾常務の那間さんをあれこれ論う行為に対して、袁満さんはその場で即座に不同意を表明しなかったのですから、袁満さんも那間さんに対しては問題ありと日頃から考えていると、常務が誤解したとしてもそれはそれで仕方が無いかも知れませんよ」
「でもそれはあくまでも誤解で、俺は別にそんな事考えていないもの」
「しかし土師尾常務が今度の全体会議で、袁満さんが特段自分の那間さん評に抗わなかったというところを、しっかり利用するかも知れないじゃないですか」
「いやあ、それはその時にきっぱり否定すればいいし」
 袁満さんは多少顔を引き攣らせながら否定して見せるのでありました。
「しかし会議で土師尾常務が那間さんの無礼について急に縷々喋り出して、これは袁満君も同意している事だけど、とか何とか付け足したとしたら、袁満さんがその時に慌ててあたふたしながら否定しても、ペースとしては土師尾常務の方にまんまと乗せられた形になって、その否定はちゃんと那間さんには伝わらないかも知れないじゃないですか」
(続)
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