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あなたのとりこ 530 [あなたのとりこ 18 創作]

 袁満さんが鼻を鳴らすのでありました。
「そうね。どちらかと云うとオロオロして、家に帰るタイミングを逸して、ネガティブな妄想に襲われながら、会社にくよくよ居残っているかも知れないわね」
 那間裕子女史が薄ら笑いながら云うのでありました。
「自分ではどうして良いのか判らずに、日比さんが帰って来るのを只管待っているかも知れないし、日比さんが帰ってきたら、待ってましたとばかり今日の出来事をすごい剣幕で洗い浚いぶち撒けて、取り敢えず自分への共感を得ようとするかも知れない」
 袁満さんがリアルにその様子を思い浮かべているような表情をするのでありました。
「まあ、日比さんじゃあんまり頼りにはならないから、取り敢えずある事無い事ぶち撒けるとしても、それで少し気持ちが落ち着くのを期待して、と云う程度だろうけどね」
 甲斐計子女史も頷くのでありました。
「非組合員である日比さんを確実に味方に付ける意図だな」
 均目さんが顎を撫でながら云うのでありました。
「そうね。それも確かにあるかも知れないわね」
 那間裕子女史が賛同するのでありました。
「でも日比さんも日頃から土師尾さんを決して好くは思っていないから、そう易々とは味方には付かないんじゃないかしら」
 甲斐計子女史は首を傾げるのでありました。
「いや、日比さんは結構な蝙蝠だから土師尾常務にも良い顔をしたいだろうし、ひょっとしたら条件次第では、結構すんなりと土師尾常務の側に付くかも知れないよ」
 袁満さんは日比課長とは長年しっくりいっているし、日頃から昵懇の仲のようにしているけれど、しかしなかなかその人間性に関しては少々懐疑的なようであります。
「なかなか油断出来ない人みたいだね、その日比課長と云う人は」
「いやまあ、案外チョロい人でもありますけどね」
 袁満さんは横瀬氏の言葉にそう返して片頬で笑むのでありました。「それに元々会社を辞めさせたかったのは、出雲君の次ぎは恐らく日比さんだったろうから、土師尾常務もそんなに簡単に日比さんを味方に付けようとはしないだろうし、日比さんの方も俄かには信頼が置けない土師尾常務の懐柔策には、そう簡単に乗れないだろうしなあ」
「でもそれは片久那さんが会社に居ると云う前提での話しで、それが崩れたら土師尾さんの態度も変わるし、日比さんも少しは抜け目なく計算を働かせるんじゃないかしら」
 甲斐計子女史が二人の気持ちを分析するのでありました。
「お互いの打算がここに来て合致するって事ね」
 那間裕子女史も甲斐計子女史の分析に頷いて見せるのでありました。

 ここで均目さんが語調を変えて話しの推移を調えるのでありました。
「まあ、土師尾常務の気持ちとか日比課長の打算とかはこの際別の話しとして、ここは明日になって土師尾常務にどう対するかと云う話しに戻ろう」
(続)
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