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あなたのとりこ 475 [あなたのとりこ 16 創作]

 袁満さんが均目さんの言を即座に否定するのでありました。まあそう云う事もあり得るかなと頑治さんは心の内で首肯するのでありました。
「確かに那間さんを怒らせる程の勇気も根性も、土師尾常務には無いか」
 均目さんは袁満さんの言に納得するのでありました。「じゃあ矢張り、俺が営業部にコンバートされる公算は、可能性として大ではあるか」
「均目君は大概の原価見積もりは出来るし製作工程も把握しているから、そういう意味では土師尾常務よりも、営業要員として戦力になるかも知れない」
 日比課長が均目さんコンバート説を補強するのでありました。
「成程ね、それはそうだ」
 均目さんが他人事のように頷くのでありました。「ただそれの第一番のネックは、俺に営業に移る気が更々ないと云う事ですけどね。俺は営業向きの人間じゃないし」
「若し営業に移れと、土師尾さんに本当に云われたら?」
 甲斐計子女史が多少身を乗り出すようにして訊くのでありました。
「その時はけじめと云う点から、俺も会社を辞めますよ」
 均目さんはきっぱりと云うのでありました。
「片久那制作部長が居ないから、山尾君の時のように均目君を説得する人も居ないか」
 日比課長がそちらの方面から納得の頷きをするのでありました。
「まあ、均目君が営業にコンバートされると云うのは、今ここで全くの仮定の話しとして出ているだけで、そう云う兆候があると云う訳でも未だないですからねえ」
 頑治さんが背凭れに身を引いた位置から云うのでありました。「それより、念を押すようだけど、片久那制作部長が会社を辞めても、会社は何とかやっていけるんですよね」
「今まで通りの機能と効率で、と云うのは当初はしんどいかも知れないけれど、まあ、曲がりなりにも何とかやってはいけると思うよ」
 均目さんがそう応えて横の那間裕子女史を見るのでありましたが、今度も那間裕子女史は均目さんの方を向いて同意の仕草をして見せる事もなく、卓上の自分のビールグラスに手を添えて、そこに視線を落とした儘の素っ気ない素振りなのでありました。
「営業も、地方特注営業と云うのはなくなるとしても、従来通りの特注営業はその儘の形態でやっていけるんですよね?」
 頑治さんは日比課長の方に日本酒を差し翳すのでありました。
「まあ、やっては行けるよ。売り上げがどうなるかは保証出来ないけれど」
 日比課長は消極的な云い方ながらも頷いて見せるのでありました。
「地方出張営業はどうですかね?」
 頑治さんは今度は袁満さんに問うのでありました。
「この前唐目君にアドバイスを貰った方向で調整しているよ。それに社長が云っていた紙商事を退職する矢目さんともこの前面談して、嘱託としてウチの出張営業を遣ってくれそうな感触を貰っているから、まあ、ちょっとは目途も立ってきているかな」
 その言葉を聞いて頑治さんは大きく頷くのでありました。
(続)
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