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あなたのとりこ 466 [あなたのとりこ 16 創作]

「じゃあ何を根拠に、大丈夫だなんて安請け合い出来るのかしら」
「制作部に関しては均目君も殆どの見積もりは出来るし、と云う事は制作部でかかっている月々の経費も把握出来るから、取引先から貰った請求書の処理や支払いの方も熟せる。会社に依って銀行振り込みにするか手形にするかは後で教えて置くし、発行する手形の種類とかも原則は簡単だ。新規商品の編集作業も製作も、これは今迄に熟している」
「それはそうですけど、でもちゃんとやれるか自信は今一つだなあ」
 均目さんは心許ないような事を云うのでありました。自分でも何とかやれるとは思うのでありましょうが、経験不足と億劫から、少々弱気になっているのでありましょう。
「慣れてくれば特に難しい事じゃない。誰にでも出来る作業だ。多少面倒だけど」
 片久那制作部長は均目さんの懸念を掃うのでありました。「それから那間君の方も今迄の仕事をその儘熟すだけだから特に問題は無かろう。製作に関わる作業はほぼ判っているし、地図類や冊子や旅行案内類の経年変化修正の要領も今迄やっていたその儘だ。多少スピード感は欲しいところだがな。懸念があるとすれば朝寝して遅刻する事だけだ」
 那間裕子女史は、始めは片久那制作部長の顔に視線を投げていたのでありましたが、中盤のスピード感云々と云う辺りでもじもじし出して、後段の遅刻云々の所で肩を竦めて俯くのでありました。案外しおらしいと云えばしおらしいような仕草であります。
「後は均目君が今以上に忙しくなる分のサポート、と云う事になる。それは二人で良く打ち合わせして分担を決めれば良いし、そこは二人の裁量だ」
 片久那制作部長は目を上げない那間裕子女史にそう云い置いて、今度は頑治さんを見るのでありました。自分は何を指示されるのかと半分身構えて、頑治さんは片久那制作部長の目を見返すのでありましたが、片久那制作部長は少し目を留めただけで頑治さんから視線を外して日比課長に目の焦点を合わせるのでありました。
「営業の方は別に俺が居ても居なくても問題は無いかな」
「まあ、それは多分そうですけど、・・・」
 日比課長はすぐには胸を叩かないのでありました。「片久那制作部長が居なくなると、土師尾常務の遣りたい放題を抑える人が誰も居なくなって仕舞うかな」
「そんなのは無視すれば良いだけの話しだ」
 片久那制作部長は平然と云い放つのでありました。
「いやあ、しかし、・・・」
 日比課長が顔を歪めるのでありました。「そうは云っても、なかなか執念深い人だし、無視したら後でどんな仕打ちをされるか判ったものじゃないし」
「日比さんが毅然としていれば良いだけの話しだよ」
 片久那制作部長は暗に日比課長の土師尾常務に対する弱腰と無用な阿りを、あんまり露骨にならないようにそれとなく批判するのでありました。
「日比さんは土師尾常務の前ではおどおどするだけで、全く頭が上がらないと云った感じだしなあ。何か弱みでも握られているんじゃないかと疑いたくなるよ」
 袁満さんが前にも聞いた科白で日比課長の日頃の態度を揶揄するのでありました。
(続)
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