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あなたのとりこ 372 [あなたのとりこ 13 創作]

「もう全員揃っているのなら、未だ終業時間前だけど、ぼちぼち始めるとしましょう。別にそれでも仕事上の不都合は無いよね?」
 社長は土師尾常務に聞くのでありました。
「未だ日比君が帰って来ていませんが」
 土師尾常務がそう云い終らない内に、当の日比課長が扉を押し開いて事務所の中に入って来るのでありました。日比課長は社長の姿をすぐに認めて、別に特段後ろめたい訳ではないけれどそこに社長が居る事が意外だったせいか、少し臆したような表情をするのでありました。日比課長は全体会議が夕方ある事は既に知っているのでありました。
「これで全員揃ったかな」
 社長にそう訊かれた土師尾常務が日比課長、袁満さん、それに出雲さんを無表情で順に見るのでありました。それから返事まで未だ少し間を取るのは、甲斐計子女史も勘定に入れてして、制作部の二人もちゃんと居る筈だと頭で確認する作業なのでありましょう。
「唐目君は下の倉庫に居るのかな?」
 土師尾常務は袁満さんに確認するのでありました。
「ええ、発送荷物の未だ梱包作業中ですが」
 袁満さんはそう応えてすぐに自分の机上に置いてある電話の受話器を取り上げて、内線で倉庫を呼び出すのでありありました。
 呼び出し音が鳴ると頑治さんは受話器を取り上げる前に、会議が始まるからすぐに上がってこいと云う指示だろうと推察するのでありました。
「仕事は片付いたかな?」
 袁満さんが受話器の向こうから訊くのでありました。
「まあ、概ね梱包は片付きましたけど」
「少し早いけど会議を始めるから事務所に上がって来てくれるかな」
「ああそうですか。判りました。それじゃあ発送伝票を書いて運送会社に引き取り依頼の電話をしてから、すぐに上に行きます」
 頑治さんは受話器を置くと残務を手早く終わらせて、荷物を駐車場脇に出して、何時ものように自分が不在でも遣って来たトラックの集荷が滞りなく行われるように、荷物の結束バンドに運送会社の発送伝票を挟んで按配してから扉に鍵を掛けるのでありました。

 頑治さんが事務所に上がっていくと、前の団体交渉の時のように社長と土師尾常務、それに社員全員が応接スペースに集っているのでありました。二つ並んだ一人掛けソファーに社長と土師尾常務が座り、対面の三人掛けのソファーに袁満さんを挟んで左奥に日比課長、右手前に那間裕子女史が座り、均目さんと出雲さん、それに甲斐計子女史が自分の机の事務椅子をソファー傍に持ってきてそこに座っているのでありました。
 年季からすれば那間裕子女史の席には甲斐計子女史が座るのが順当ではありますが、甲斐計子女史は土師尾常務と面と向かうのはまっぴら御免と遠慮したのでありましょう。頑治さんも制作部スペースから自分の椅子を持ってきてその輪に加わるのでありました。
(続)
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