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あなたのとりこ 259 [あなたのとりこ 9 創作]

「そう云えば確かに、均目君の態度はそんな風だよなあ」
 頑治さんは納得する風を見せるのでありました。
「何でそんなに全総連が嫌いなの?」
 那間裕子女史が多少興味があるらしく均目さんの表情を窺うのでありました。
「あそこは何だかんだと抗弁していても、或る左翼政党と全く一体なんだよ」
「ふうん、そうなの?」
 那間裕子女史が少し口を尖らすのでありました。
「確かにそれは良く聞く話しではあるな」
 頑治さんが頷くのでありました。戦後すぐに出来て状況がその頃と一変しても未だにその頃の理念とかを振りかざす、国会でそこそこの勢力を誇る万年野党である事に甘んじている老舗政党とか、無節操なくらいに離合集散を繰り返すだけの自分達の都合最優先の政党ではないけれど、そういうのとは一線を画した事を売り物にしている、発する理念や政策が如何にも左翼的でげんなりするくらい潔癖で頑なで、それ故妙に胡散臭い印象のある政党の事を均目さんは云っているのでありました。その政党の政策とか在り方の良し悪しとは別に、好き嫌いで云えば頑治さんも好きな方とは云えない政党でありましたか。
「あそこは世間に売り出す目的で如何にも民主的で、正義と弱い者の味方として戦っていると云う表の顔と、俺に云わせれば、典型的に排他的で攻撃的で権力主義的な裏の顔があって、正体であるその裏の顔を隠すための方便として表の顔を技巧的に遣っているとしか思えないんだよなあ。お前等、実はそんなヤツ等じゃないんだろう、って云う感じ」
「それはどんな政治政党だってそうなんじゃないの?」
 那間裕子女史が首を傾げて見せるのでありました。
「そりゃあ確かに政党ならそう云う面も大なり小なり持っているし、それがある意味でその政党の奥深さにもなる訳だけど、あそこはちょっと度が過ぎているように思える」
「度が過ぎているって?」
「これは片久那制作部長が云っていたんだけど、例えば色んな集団が同じ目的の闘争を展開していたとしても、いざ共闘と云う話しになるとあそこは必ず裏切るらしい。それは同じ考えの様々な集団の中で、自分達がその運動のヘゲモニーを絶対握らないと気が済まないと云った邪な狙いがあって、他の集団を蹴落としに掛かろうとする了見らしいんだな。そのやり方がこれまた露骨で冷血で狡猾で、一片の愛嬌も愛想も無いと云う事らしい」
「それは片久那さんの学生時代の話しかしら」
「そうだね。闘争の中で主導権を握るためにはどんなことだってやるし、敵方に覇を争っている集団なり人間なりを売り渡すことだって平気でやりかねないみたいだぜ」
「それは悪辣だなあ」
 頑治さんが呟くのでありました。
「正義は自分達だけにあると云う考えに凝り固まっているから、自分達以外の仲間への裏切りを平気でやらかすし、それを屁とも思っていない。闘争によって何かを実現する事じゃなくて、その闘争の主導権を握るのがアイツ等の第一の行動目的なんだ」
(続)
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