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あなたのとりこ 230 [あなたのとりこ 8 創作]

 外部の三人も交えたその席では一応山尾主任の営業部への異動、それに袁満さんと出雲さんの仕事内容の変更も話題に上るのでありました。
「組合結成を準備している事が上にバレたんじゃないだろうな」
 派江貫氏がそんな懸念を表するのでありました。「その妨害工作として、そんな人事の変更や仕事の変更を向うは画策したとは考えられないかね」
「でもバレるとしたら、当該の五人か私等三人からと云うことになるでしょう」
 木見尾氏も深刻そうな顔をしてそう云うのでありましたが、それは派江貫氏のその考えに頷いた上でそう云う方向に話しを進めようとしてか、それともその意見に否定的な意を表そうとしての発言なのか頑治さんには判断出来ないような云い方でありましたか。
「そうね。全総連の方からと云う線は先ず無いだろうね」
 この横瀬氏の発言も派江貫氏の意見を踏まえたもののようでもありましたか。
「私等三人も、全総連内の他の、この組合結成を承知している者も、お宅の社長や二人の部長とは接点が何も無いからなあ」
 ぐるりと出席者を見回しながらの横瀬氏のこの言は、バラした犯人はお前等当該の誰かに違い無いと云っているようでもありましたか。
「俺達がそんな事を噯にも出す筈がないじゃないですか」
 均目さんが早速反論するのでありました。
「そうよ。一番バレて困るのはあたし達だもの」
 那間裕子女史が均目さんに同意するのでありましたが、ほんの少し意に引っかかるところがあるのか袁満さんと出雲さんの方に横目をくれるのでありました。「若しかして袁満君か出雲君か、日比さん辺りに組合の件を迂闊に漏らしたりしていないわよね?」
 名指しされて袁満さんはたじろいだのか慌てて首を横に振るのでありました。
「いや、日比さんには何も云っていないですよ」
「飲んだ席か何かでうっかり、なんて事も無いでしょうね?」
 那間裕子女史が怖い顔で追及するのでありました。
「無いです、無いです」
 袁満さんは、今度は首ではなく両の掌を横に大袈裟に振るのでありました。「それは確かに何度か居酒屋で一緒に飲む機会もありましたけど、組合の件は冗談にも日比さんの前では口にしてはいけない事だと、無神経な俺にもそのくらいの警戒心はありますから」
「ああそう」
 那間裕子女史は疑いを未だ二分程残したような云い方をするのでありました。
「俺も何も云っていませんよ」
 続いて出雲さんが真顔で発言するのでありました。「俺は一緒に飲んでもいませんし」
「制作部の三人から片久那制作部長に漏れたと云う事は無いのですかね?」
 袁満さんが逆に那間裕子女史に訊くのでありました。
「それは有り得ないわ」
 那間裕子女史はすぐさま断言するのでありました。
(続)
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