あなたのとりこ 94 [あなたのとりこ 4 創作]
「ちゃらんぽらんなら仕事を差し置いて迄も武道の練習はしないでしょう」
「ああ確かにね。でもこっちにしたら仕事を差し置かれるのが困ったものだけどね」
「それは云えていますけど」
出雲さんは苦笑しながら何度か頷くのでありました。
「まあ、ああ云う人だから、武道の道場の中でも色んな人と軋轢を引き起こしているんじゃないかな。武道に向きあう気持ちと道場での人間関係は別物だろうから」
袁満さんはどうしても刃葉さんと云う人を信用してはいないようでありました。
「刃葉君は社員の中でも特に、土師尾営業部長が一番気に入らない存在だから」
日比課長が同じ刃葉さんの話題ながら少し話しの色味を変えるのでありました。
「そう云えば前に、土師尾営業部長の事を生臭坊主だと軽蔑していましたね」
出雲さんが日比課長の話題を受けてそう応えるのでありました。
「俺もあんなインチキ坊主は滅多に居ないと思っているよ」
袁満さんはこの点、信を置いていない刃葉さんと同意見なのでありました。
「何ですかその、生臭坊主、とか、インチキ坊主、と云うのは?」
頑治さんが三人の誰にとも無く訊くのでありました。
「土師尾営業部長は坊主の資格を持っているんだよ」
袁満さんが応えるのでありました。
「坊主の資格、ですか?」
「勿論それは国家資格とかそう云ったものなんかじゃないけどね」
「要するに僧籍に在ると云う事ですか?」
「そう。千葉の或る寺の副住職だか副々住職だかしているみたいだよ」
袁満さんが説明を始めるのでありました。「住んでいる家の近くの寺でね。学生時代に何かそっち方面の勉強をして資格を取ったらしいよ」
「仏教関係の学校に行かれていたのですか?」
「いや、そうじゃないけど」
聞けば土師営業部長の出身大学はどちらかと云うと神道系で有名な大学でありました。色んな地方の神社の、神官をしている家の子弟が家を継ぐためにその大学に通うと云う話しは、何となくではありますが頑治さんは誰かから聞いて知っているのでありました。
「その大学は仏教とはあんまり関係が無いところではないですかね」
「まあそうだね」
「土師尾営業部長の実家がお寺なのですか?」
「いや、違うんじゃないかな」
「では神社の方ですか?」
「それも無関係みたいだよ」
「では自分の了見で神道系の大学に入って、仏教の方に進路を曲げたと?」
「学力とか、入学金とか、色んな条件からその大学に行ったんだろうけどさ」
(続)
「ああ確かにね。でもこっちにしたら仕事を差し置かれるのが困ったものだけどね」
「それは云えていますけど」
出雲さんは苦笑しながら何度か頷くのでありました。
「まあ、ああ云う人だから、武道の道場の中でも色んな人と軋轢を引き起こしているんじゃないかな。武道に向きあう気持ちと道場での人間関係は別物だろうから」
袁満さんはどうしても刃葉さんと云う人を信用してはいないようでありました。
「刃葉君は社員の中でも特に、土師尾営業部長が一番気に入らない存在だから」
日比課長が同じ刃葉さんの話題ながら少し話しの色味を変えるのでありました。
「そう云えば前に、土師尾営業部長の事を生臭坊主だと軽蔑していましたね」
出雲さんが日比課長の話題を受けてそう応えるのでありました。
「俺もあんなインチキ坊主は滅多に居ないと思っているよ」
袁満さんはこの点、信を置いていない刃葉さんと同意見なのでありました。
「何ですかその、生臭坊主、とか、インチキ坊主、と云うのは?」
頑治さんが三人の誰にとも無く訊くのでありました。
「土師尾営業部長は坊主の資格を持っているんだよ」
袁満さんが応えるのでありました。
「坊主の資格、ですか?」
「勿論それは国家資格とかそう云ったものなんかじゃないけどね」
「要するに僧籍に在ると云う事ですか?」
「そう。千葉の或る寺の副住職だか副々住職だかしているみたいだよ」
袁満さんが説明を始めるのでありました。「住んでいる家の近くの寺でね。学生時代に何かそっち方面の勉強をして資格を取ったらしいよ」
「仏教関係の学校に行かれていたのですか?」
「いや、そうじゃないけど」
聞けば土師営業部長の出身大学はどちらかと云うと神道系で有名な大学でありました。色んな地方の神社の、神官をしている家の子弟が家を継ぐためにその大学に通うと云う話しは、何となくではありますが頑治さんは誰かから聞いて知っているのでありました。
「その大学は仏教とはあんまり関係が無いところではないですかね」
「まあそうだね」
「土師尾営業部長の実家がお寺なのですか?」
「いや、違うんじゃないかな」
「では神社の方ですか?」
「それも無関係みたいだよ」
「では自分の了見で神道系の大学に入って、仏教の方に進路を曲げたと?」
「学力とか、入学金とか、色んな条件からその大学に行ったんだろうけどさ」
(続)
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