お前の番だ! 567 [お前の番だ! 19 創作]
「牛路先生、どうも有難うございます」
是路総士は立った儘、牛路理事にお辞儀するのでありました。
「ただし、・・・あゆみちゃんに折野君、こう云う事を聞いて気を悪くしなさんなや」
牛路理事は万太郎とあゆみに済まなさそうな笑いを投げるのでありまいた。「如何せんずっと先の事だから、ひょっとして二人が不仲になって離別したり、或いはそんな事は先ずないと思うのだが折野君が不幸にも早世するとか、まあ、明日をも知れぬ娑婆の事、不測の事態だってない事もないかも知れない。そんな場合はどうなりますかな?」
「確かに牛路先生がおっしゃるように、この世の中は将来何が起こるか判りません」
是路総士に代わって寄敷範士が立ち上がって応えるのでありました。「若し二人が存命中に離婚をした場合、当流の存続と云う見地から判断して、その離婚で折野に非があるならば折野の宗家継承及び総士先生との養子縁組みは破談とします。また当然ながら折野が既に宗家を継いでいた場合も返上となります。その上で、あゆみを含めた適当な人選を再度行い、理事会に承認を求めます。これは折野が急逝した場合も同じであります」
寄敷範士は手中のメモを見ながら続けるのでありました。「また、あゆみの方に非が認められた時には、折野は総士先生と養子縁組をしてありますからその儘宗家を継承、或いは継続する事とします。万が一あゆみが折野に先立った場合も、同じ扱いであります」
「ああ成程ね。察すればもう既にそう云う幾つかのケースも、当事者や総士先生、それに鳥枝先生や寄敷先生の間で疎漏なく話しあわれているのですな?」
牛路理事が頷きながら確認するのでありました。
「まあ、考えられる幾つかのケースは。しかしこの先何があるか知れませんから、この線に沿ってケースバイケース、と云う仕儀になるでしょうが」
「そう云う現実的な面もちゃんと話しあいの上取り決めがされているのなら、理事として我々は何か異議を申し上げる必要はありませんかなあ」
牛路理事はそう云いながら周りの理事連の顔を一渡り見回すのでありました。他の理事達は押し並べて御大に頷きを送るのでありました。
「ではこの建議、理事会でご承認いただいたと云う事でよろしいですかな?」
寄敷範士が今の牛路理事のように、理事連の顔を見渡しながら確認を求めるのでありました。理事連はこれにも同意の頷きを一様に返すのでありました。
「折野君の人格、徳性、剣術体術の実力に関しては既に承知しておりますから、あゆみちゃんに宗家を継ぐ意思がない以上、現段階では好都合な人選と云えるでしょうな」
牛路理事が云うと周りからも、いや全く、とか、これで常勝流の将来も安泰ですな、とか云った声が上がるのでありました。ま、満場一致と云う事でありますか。
万太郎とあゆみはどちらからともなく顔を見あわせて、二人揃って胸を撫で下ろすのでありました。当然ながら将来に亘っても離別等は到来する筈もないと確信している二人であってみれば、常勝流の体裁上の問題なんぞさて置き、二人の結婚に対して理事会がすんなりと祝意を表してくれたのが何よりの事と云えるのでありました。
「では、二人の結婚及び折野の宗家継承の件は承認とさせていただきます」
(続)
是路総士は立った儘、牛路理事にお辞儀するのでありました。
「ただし、・・・あゆみちゃんに折野君、こう云う事を聞いて気を悪くしなさんなや」
牛路理事は万太郎とあゆみに済まなさそうな笑いを投げるのでありまいた。「如何せんずっと先の事だから、ひょっとして二人が不仲になって離別したり、或いはそんな事は先ずないと思うのだが折野君が不幸にも早世するとか、まあ、明日をも知れぬ娑婆の事、不測の事態だってない事もないかも知れない。そんな場合はどうなりますかな?」
「確かに牛路先生がおっしゃるように、この世の中は将来何が起こるか判りません」
是路総士に代わって寄敷範士が立ち上がって応えるのでありました。「若し二人が存命中に離婚をした場合、当流の存続と云う見地から判断して、その離婚で折野に非があるならば折野の宗家継承及び総士先生との養子縁組みは破談とします。また当然ながら折野が既に宗家を継いでいた場合も返上となります。その上で、あゆみを含めた適当な人選を再度行い、理事会に承認を求めます。これは折野が急逝した場合も同じであります」
寄敷範士は手中のメモを見ながら続けるのでありました。「また、あゆみの方に非が認められた時には、折野は総士先生と養子縁組をしてありますからその儘宗家を継承、或いは継続する事とします。万が一あゆみが折野に先立った場合も、同じ扱いであります」
「ああ成程ね。察すればもう既にそう云う幾つかのケースも、当事者や総士先生、それに鳥枝先生や寄敷先生の間で疎漏なく話しあわれているのですな?」
牛路理事が頷きながら確認するのでありました。
「まあ、考えられる幾つかのケースは。しかしこの先何があるか知れませんから、この線に沿ってケースバイケース、と云う仕儀になるでしょうが」
「そう云う現実的な面もちゃんと話しあいの上取り決めがされているのなら、理事として我々は何か異議を申し上げる必要はありませんかなあ」
牛路理事はそう云いながら周りの理事連の顔を一渡り見回すのでありました。他の理事達は押し並べて御大に頷きを送るのでありました。
「ではこの建議、理事会でご承認いただいたと云う事でよろしいですかな?」
寄敷範士が今の牛路理事のように、理事連の顔を見渡しながら確認を求めるのでありました。理事連はこれにも同意の頷きを一様に返すのでありました。
「折野君の人格、徳性、剣術体術の実力に関しては既に承知しておりますから、あゆみちゃんに宗家を継ぐ意思がない以上、現段階では好都合な人選と云えるでしょうな」
牛路理事が云うと周りからも、いや全く、とか、これで常勝流の将来も安泰ですな、とか云った声が上がるのでありました。ま、満場一致と云う事でありますか。
万太郎とあゆみはどちらからともなく顔を見あわせて、二人揃って胸を撫で下ろすのでありました。当然ながら将来に亘っても離別等は到来する筈もないと確信している二人であってみれば、常勝流の体裁上の問題なんぞさて置き、二人の結婚に対して理事会がすんなりと祝意を表してくれたのが何よりの事と云えるのでありました。
「では、二人の結婚及び折野の宗家継承の件は承認とさせていただきます」
(続)
コメント 0