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お前の番だ! 520 [お前の番だ! 18 創作]

 来間は心得顔で頷くのでありました。「折野先生ならその二人が胡乱な真似を仕かけてきても、あっさりと撃退出来るでしょうし、ご健闘をお祈りしています」
 この来間の他人事のような云い草が何となく気に入らなかったので、万太郎は返事をしないのでありました。万太郎は益々気が重くなってくるのでありました。
「そう云えば、その二人の事なら花司馬先生が良くご存知なのではないでしょうか?」
 来間が黙ったままの万太郎に云うのでありました。
「ああ、それはそうだな」
 万太郎は少し目線を上げるのでありました。確かに花司馬教士なら、もう少しその二人の情報を濃く有しているかもしれません。
 あゆみに大袈裟に懸念を表明されたためか、万太郎としてもその二人の事が俄に気に懸かり出すのでありました。粗暴で得体の知れない相撲とプロレス上がりが、万太郎の談判に思わぬ支障となって、事を円やかに収める邪魔をするのではないかしらと。・・・
 花司馬教士を捉まえて訊くと万太郎が云った、相撲とプロレス上がりの洞甲斐氏の親類、と云う言葉にすぐに頷いて見せるのでありました。
「ああ、その兄弟なら知っていますよ。兄がプロレス上がりの方で、結構なノッポで体重もそこそこありそうなヤツですね。弟の相撲上がりの方は、身長は然程高くはないですが体重は優に百キロを超えている感じで、やけにごっつい印象です。二人共無愛想と云うよりは如何にも鈍そうな風で、話しかけても反応が今一つと云った印象でしたね」
「その二人が洞甲斐先生の、瞬間活殺法的な技法を修行しているのですか?」
 その万太郎の問いに花司馬教士は苦笑うのでありました。
「まあ、弟子と云うわけですからそう云う事にはなりますが、どちらかと云うと体力勝負一辺倒で、瞬間活殺法は置くとしても、常勝流のごく一般的な体術の技も習得しているとは云い難かったですね。組形稽古に対する初歩的な認識も出来ていないので、動きも良い加減と云うのかルーズと云うのか、一緒に稽古していると次第にげんなりしてきます」
「瞬間活殺法は遣わないのですね?」
「そんな技は、あの二人は端から信用していないようでしたね。まあ、信用していないのは、何もあの二人に限った事ではありませんが」
 花司馬教士はそう云って鼻を鳴らすのでありました。
「どういう経緯で、洞甲斐先生の処に弟子として入ったのでしょう?」
「相撲もプロレスも夫々仕くじって、他にやれる仕事が何もなかったから、洞甲斐さんが拾ったと云うところじゃないでしょうか」
「洞甲斐先生は二人の弟子を食べさせていたのですか? そうなら洞甲斐先生もなかなか、武道家として甲斐性があるとも云えますかね」
「なあに、洞甲斐さんはあの二人にあれこれアルバイトをさせていたのです。武道の弟子と云うよりは都合の好い貢ぎ手と云った感じですかね。洞甲斐さんの方が寧ろあの二人の稼ぎの上前を撥ねていたと云ったところでしょうね、聞いたところに依ると」
「へえ、そう云う事ですか」
(続)
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