お前の番だ! 456 [お前の番だ! 16 創作]
「来間とか山田なんかは、女性受けする甘いフェースと云う感じじゃないし」
そう云いながら万太郎は腕組みして考えこむ仕草をするのでありました。
「その通りです。準内弟子の連中は歳若過ぎて子共扱いでしょうし」
「ああそうですか。となると、・・・」
万太郎は花司馬教士の顔を上目遣いで窺い見るような目つきをしながら、冗談交じりと云った風情で極めて遠慮がちに自分を指差して見せるのでありました。
「はいご名算。しかし折野先生、そのデレデレ笑いは止めてください」
「押忍。これは失礼をいたしました」
万太郎は表情を改めるのでありましたが、先程の花司馬教士同様、口の端に締まらない笑いの痕跡が未だ残留しているのでありました。
「それから折野先生と同じくらい、ジョージもなかなか評判が良いですね」
「成程。そう云えば二人共、武道だけをやらせておくには惜しい程の、お母さん方に大いに持て囃されるような甘いマスクをしておりますからねえ」
万太郎が云うと花司馬教士は鼻を鳴らして見せるのでありました。
「甘いマスクだかしょっぱいマスクだか知りませんが、ま、そう云う事です。ジョージはエキゾチックな顔の割に日本語がかなり堪能だから、そのギャップに先ず目を奪われるのでしょうし、折野先生は若いヤツ等を束ねている辺りが頼もしく見えるのでしょうね」
「そうですかね。僕はこの甘いマスクが第一の理由だと思いますがねえ」
万太郎はもう一度自分の顔を指差して見せるのでありました。
「まあ、それはどうでも良いとして」
花司馬教士はそう云って万太郎に少し顔を近づけるのでありました。「そのお母さん方に評判の良い折野先生の噂話しとして、こう云うものがありますよ」
花司馬教士は万太郎の顔を下から覗き見るような目をするのでありました。
「え、何ですか一体?」
万太郎も興味を惹かれて少し顔を近づけるのでありました。
「それはね、・・・」
花司馬教士は少々体裁ぶってから続けるのでありました。「折野先生とあゆみ先生は、近い将来結婚する間柄のようだ、とか云うものですよ」
万太郎はそう聞いて、思わず花司馬教士から顔を少し離すのでありました。
「何ですかそれは?」
「いやまあ、お母さん方の間の単なるあれこれの噂の一つですよ、あくまでも」
花司馬教士は笑うのでありましたが、万太郎を上目で見る目つきはそのままにしているので、これは屹度、そう聞いた万太郎がどう云う反応を示すかを観察しているのでありましょう。ここは迂闊な応動は見せられないと咄嗟に思った万太郎は、強張った表情になるのを寸でのところで押さえて、一笑に付す、と云った具合のクールな笑いを口元に浮かべて見せるのでありましたが、上手に隠し果せたかどうかは判らないのでありました。
「そうですか。どうしてまた、そんな根も葉もない噂が立つのでしょうかねえ」
(続)
そう云いながら万太郎は腕組みして考えこむ仕草をするのでありました。
「その通りです。準内弟子の連中は歳若過ぎて子共扱いでしょうし」
「ああそうですか。となると、・・・」
万太郎は花司馬教士の顔を上目遣いで窺い見るような目つきをしながら、冗談交じりと云った風情で極めて遠慮がちに自分を指差して見せるのでありました。
「はいご名算。しかし折野先生、そのデレデレ笑いは止めてください」
「押忍。これは失礼をいたしました」
万太郎は表情を改めるのでありましたが、先程の花司馬教士同様、口の端に締まらない笑いの痕跡が未だ残留しているのでありました。
「それから折野先生と同じくらい、ジョージもなかなか評判が良いですね」
「成程。そう云えば二人共、武道だけをやらせておくには惜しい程の、お母さん方に大いに持て囃されるような甘いマスクをしておりますからねえ」
万太郎が云うと花司馬教士は鼻を鳴らして見せるのでありました。
「甘いマスクだかしょっぱいマスクだか知りませんが、ま、そう云う事です。ジョージはエキゾチックな顔の割に日本語がかなり堪能だから、そのギャップに先ず目を奪われるのでしょうし、折野先生は若いヤツ等を束ねている辺りが頼もしく見えるのでしょうね」
「そうですかね。僕はこの甘いマスクが第一の理由だと思いますがねえ」
万太郎はもう一度自分の顔を指差して見せるのでありました。
「まあ、それはどうでも良いとして」
花司馬教士はそう云って万太郎に少し顔を近づけるのでありました。「そのお母さん方に評判の良い折野先生の噂話しとして、こう云うものがありますよ」
花司馬教士は万太郎の顔を下から覗き見るような目をするのでありました。
「え、何ですか一体?」
万太郎も興味を惹かれて少し顔を近づけるのでありました。
「それはね、・・・」
花司馬教士は少々体裁ぶってから続けるのでありました。「折野先生とあゆみ先生は、近い将来結婚する間柄のようだ、とか云うものですよ」
万太郎はそう聞いて、思わず花司馬教士から顔を少し離すのでありました。
「何ですかそれは?」
「いやまあ、お母さん方の間の単なるあれこれの噂の一つですよ、あくまでも」
花司馬教士は笑うのでありましたが、万太郎を上目で見る目つきはそのままにしているので、これは屹度、そう聞いた万太郎がどう云う反応を示すかを観察しているのでありましょう。ここは迂闊な応動は見せられないと咄嗟に思った万太郎は、強張った表情になるのを寸でのところで押さえて、一笑に付す、と云った具合のクールな笑いを口元に浮かべて見せるのでありましたが、上手に隠し果せたかどうかは判らないのでありました。
「そうですか。どうしてまた、そんな根も葉もない噂が立つのでしょうかねえ」
(続)
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