SSブログ

お前の番だ! 429 [お前の番だ! 15 創作]

 万太郎も剣士郎君と同じに首を傾げてざっと換算してみるのでありまいた。
「特に帰り道は、途中の駅前商店街の玩具屋とかお菓子屋で屹度捕まったりして寄り道するに違いないから、帰りつくまでにもっとかかるかも知れないわね」
「ああ成程。それはそうかも知れませんね。なあ、剣ちゃん」
 万太郎が剣士郎君を見てそう云うと、剣士郎君は何の話しだか良く判らないような顔をして、何となく曖昧に頷き返すのでありました。
「小学生になったら道場に通うんでしょう?」
 あゆみが訊くのでありました。今度は剣士郎君ははっきり頷くのでありました。
「まあ、夕方の専門稽古と夜の一般門下生稽古の間の時間に、総士先生の許可を頂いて自分が少し鍛えようかと思っているのですが」
 花司馬教士が腹積りを披露するのでありました。
「実はその時間帯で今度、子供達だけの稽古を始めようと思っているんです」
 あゆみが今現在計画中の、新設する稽古の事を話すのでありました。
「子供達だけの稽古、ですか?」
「そうです。小学生を対象に、少年教室、とか名前をつけて、近々総士先生にご許可を頂ければ、早速募集をかけようかと云う話しになっています」
 あゆみの後を受けて万太郎が案をやや具体的に話すのでありました。「柔道でも剣道でも、それに合気道でも空手でも、色んな武道で少年対象の稽古がありますから、常勝流でもやってみようかって、今あゆみさんと計画しているんですよ」
「へえ、それは良いですね。若しそうなったら剣士郎を少年教室入門第一号にします」
「ただ、初めての試みになりますから、どの程度に常勝流を教えるかとか、どんな指導法でやっていくかとか、その辺は未だ具体化してはいないのです」
「しかし子供の頃から常勝流に親しんでいれば、大人になってからも稽古を続けてくれるかも知れません。将来の門下生の確保と云う点でも大いに有意義ではないでしょうか」
「まあ、こちらの手前勝手な目論見としてはそうですが、はたしてその辺はどうなるか、それは未だ判りません。しかし少なくとも無意味な試みではないとは思うのですが」
「それに子供達にとって魅力的な稽古が出来るかどうかは、未知数です。今までに子供を教えた経験が誰もありませんし、結局目論見倒れに終わるかも知れませんよ」
 あゆみが不安を口にするのでありました。
「いやいや、世の中が段々物騒になっていますから、子供に武道を習わせたいと云うニーズはあると思います。それに礼儀作法習得や忍耐力養成にも武道はもってこいですし」
 花司馬教士はごく一般的で楽観的な観測を述べるのでありました。
「まあ、こちらとしてはそう考えるのですが、世間がどう反応するかはまた別です」
「いやいやいや、自分はその計画に大賛成です」
「花司馬先生にも積極的に参画していただきたいと思っています」
 あゆみが頭を下げるのでありました。万太郎もそれに倣うのでありました。
「押忍。承知いたしました。自分も大いに働きます」
(続)
nice!(19)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 19

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

お前の番だ! 428お前の番だ! 430 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。