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お前の番だ! 381 [お前の番だ! 13 創作]

「ほう、そうですか。ところで、その鳥枝さんの知りあいの理事さんご本人は、一連の騒動に嫌気が差して、興堂派の理事を辞めるとかおっしゃっておられないのですかな?」
 この質問は、広島支部の須地賀氏に離脱の相談をされているのだから、鳥枝範士の知り合いの理事も、一蓮托生の心算でいると云う是路総士の推論でありましょう。
「ええ、辞めたがっております。任期があと一年残っていて、会長に慰留されていると云うのもありますが、ワシが情報収集のために残って貰っていると云う側面もあります」
「ああ成程。鳥枝さんの諜報員と云うわけですね」
 是路総士はそう云って笑うのでありました。「ところで広島支部は興堂派から離れて、その儘自立してやって行けるのですか?」
「多分大丈夫でしょう。地元にしっかり根を下ろした団体ですから。しかし、常勝流、の名前の使用問題があるので、独立した後にウチの方にコンタクトしてくるでしょう」
「ああそうですか。まあ、名前の使用の件はまた後の問題として、取り敢えずその広島支部の独立が、興堂派支部の様々な動きの引き金となるような気がしますね」
「そうでしょう。独立か残留かで浮足立つ支部がかなりあると思いますね」
「広島支部がこちらにコンタクトしてきた辺りで、威治君と一度接触してみますかな」
「そうですね。そうすればこちらが関与する理由が立ちます。広島からこういう話しが来ているが、興堂派は今どうなっているのか、と云って総本部に呼び出しますかな」
「事の運び方としては、すっきりしていますな」
 このような対応方法が一決したところで、万太郎が口を開くのでありました。
「それで、総士先生は興堂派をこの先どう扱うお心算なのでしょうか?」
「威治君の了見次第だが、支部の事情や要望を広く聞き入れて、その意向に沿った形での流派運営に還るなら、それに常勝流を名乗る以上、常勝流の技法や稽古法をしっかり守る意志があるのなら、これまでと同様の交誼を保証しようと思うが」
「しかし威治先生が、あくまで自分がやろうとしている形に拘るようなら、どうされるお心算でしょうか? 何か妥協策のようなものをご用意されているのでしょうか?」
「そうなれは向こうの会長の真似ではないが、常勝流からつれなく破門するまでよ」
 鳥枝範士が代わって応えるのでありました。
「しかし破門と云っても、元々総本部からは独立した会派ですから」
「つまり、常勝流、の名前を使わせないと云う事だ。常勝流、も、常勝流武道、も、常勝流武術、も、・・・それに、ええと後幾つか、総士先生の権利所有と云う事で商標登録を済ませた。だから威治には勝手に、少なくとも向後十年間、常勝流、を使わせない事は出来る」
「ああ、商標登録ですか。・・・」
「何だ、何か文句でもあるか?」
 鳥枝範士は万太郎を睨むのでありました。
「いや、何となく武道と、商標、と云う言葉がしっくりこないだけです」
「実はワシもそう思う。だから今まで登録に関しては迂闊にも全く無関心であった。しかし事がこのように推移すると、その辺も必要措置になる。懇意の弁護士の入れ知恵だが」
(続)
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