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お前の番だ! 297 [お前の番だ! 10 創作]

 火曜日も木曜日も週の内で比較的稽古参加者の多い曜日でありました。万太郎とあゆみは予めそう云う数字を踏まえた上でこう提案をするでありました。
「日曜日を外してくれたのは有難い。時々日曜日には孫が遊びに来たりするからなあ」
 寄敷範士がそう云って万太郎とあゆみに笑みかけるのでありました。二人はその寄敷範士の事情に関しては特段、踏まえていたわけではないのでありましたが。
「それで、その他の曜日はお前達が担当するのだな?」
 鳥枝範士が一応念のために、と云う風に訊くのでありました。
「そうです。あたし達二人が夫々単独でとなると、未だ気後れするところがありますから、暫くは二人揃ってと云う形で稽古を担当するつもりです」
 あゆみが何度か頷きながら応えるのでありました。
「専門稽古の剣術の稽古は土曜日ですから、丁度総士先生にお願い出来る事になります。それから夜の内弟子稽古は僕等が見ます。各支部への定期の出張指導は、特別の場合は総士先生にお願いする場合もありますが、原則として総士先生は総本部にデンと腰を落ち着けていていただきます。病み上がりでいらっしゃる、と云う事情もありますから」
 万太郎が後を続けるのでありました。
「私ならもう、出張指導も大丈夫だと思うがなあ」
「いやいや、総士先生は折野が云うように矢鱈と外に出ないで、総本部にデンと腰を据えていらっしゃる方が如何にも重々しそうで結構ですかな」
 鳥枝範士が万太郎の意見に賛意を示すのでありました。
「では今日の話しあいを踏まえて、総士先生を除く四人の出張指導の割りふりとか、補助につく者の人選をします。四人は特定の支部に偏らない巡回制で色々な支部を回る事にしますが、それは一か月分の予定を僕等で按配して、前月の頭に連絡させていただきます。勿論、鳥枝先生は金曜日、寄敷先生は日曜日を避けるようにスケジュールを組みます」
「いやまあ、日曜日であってもそれはそれで私は構わないのだが」
 寄敷範士がそう云って頭を掻くのでありました。
「有難うございます。しかしまあ、日曜日は避けます」
「いやいや、済まんなあ、あれこれ横着な事を私が迂闊にも云ったものだから」
「これでようやく、落ち着くべき体制に落ち着いたような安堵感を覚えます」
 万太郎はそう云いながら是路総士、鳥枝範士、それから寄敷範士の順に顔を向けて笑むのでありました。万太郎に清々たる笑いを向けられたものだから、思わず知らずと云った具合に三人は万太郎に同じような笑みを返すのでありました。
 是路総士が総本部道場の稽古に復帰して指導が新体制になると、それにあわせるように威治教士が総本部の一般門下生稽古に姿を見せなくなるのでありました。是路総士に依れば、是路総士の復帰で指導体制が一新され、総本部の手薄になった稽古指導に自分の手助けはもう必要ないと判断したから来なくなったのだろう、と云う解釈でありました。
 それは威治教士が如何にも好意から来てくれていたと云う理解で、万太郎はその論に俄には賛成出来ないのでありました。威治教士がそんな善意の人とは思えないのであります。
(続)
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