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お前の番だ! 296 [お前の番だ! 10 創作]

「私は特に異存はない。私が稽古に復帰出来るなら、それで良いのだから」
 是路総士のその言葉を聞いて、万太郎とあゆみは同時に低頭するのでありました。
「ふうん。そう云う通達のためにワシ等は今日呼び出されたわけか」
 月曜日の昼食を兼ねた師範控えの間の件の五人の会合で、鳥枝範士がそう云いながら、来間が先程持ってきた茶を啜るのでありました。
「通達、と云うのでは勿論なくて、あくまでもご相談です」
 万太郎が訂正するのでありました。
「まあどちらでも良いが、何かお前達だけで指導をするのに不都合が生じたのか?」
「そう云う事ではありませんが、折角の多士済済を、理想的に活用しない手はないと云う考えからです。総本部での指導に厚みを持たせたいと云うのが狙いです」
「やってみたら、段々自信がなくなったと云うのではないのだな?」
「そう云う弱気な心根や、横着心とか無責任からのご相談と云うのではありません」
「まあ、最近入門者も増えてきたし、古参の者も誰も辞めたりもしないから、寧ろあゆみや折野は自分達が総本部の稽古を主導する事に大いに自信を深めたろうよ」
 寄敷範士が鳥枝範士にそう云うのでありました。「だからこの二人が今の責任から逃げ腰になって、で、こう云う提案をしているわけではないとは思うがね」
「総士先生のご復帰を機に、より重厚な新体制としたいのです」
 万太郎は寄敷範士と鳥枝範士の両者を交互に見ながら訴えるのでありました。
「ま、良い。ワシはお前達の了見に従うのみだ」
 鳥枝範士は、前にこの件を話した時の是路総士と同じ云い草をするのでありました。
「それでは、夫々の担当の曜日を決めたいのですが、両先生のご都合は如何でしょう?」
 あゆみが話しを前に進めるのでありました。
「その前に、総士先生のご都合は如何ですかな?」
 寄敷範士が是路総士の方に顔を向けるのでありました。
「私は何曜日でも一向に構いませんよ。寧ろご両所の方が他に仕事を持っていらっしゃるんだから、そちらを優先としたいですな」
「私も曜日を指定されれば、それにあわせますよ」
 寄敷範士はそう云いながら万太郎とあゆみの方を見るのでありました。
「ワシも金曜日はいけないけれど、他の曜日なら何曜日だろうと問題ありませんな」
 鳥枝範士もそう云って頷くのでありました。
「私等三人は、畢竟、こういう次第だ」
 是路総士は万太郎とあゆみを交互に見ながらそう云うのでありました。
「判りました」
 あゆみはそう返事して万太郎と顔を見あわせて一つ頷くのでありました。
「では、専門稽古でも一般門下生稽古でも稽古参加者の一番多い土曜日を、総士先生にご担当していただきたいと思います。それから火曜日を鳥枝先生に、木曜日を寄敷先生にお願いしたいと思いますが、そう云う事でよろしいでしょうか?」
(続)
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