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お前の番だ! 114 [お前の番だ! 4 創作]

「ああそうだなあ。それは拙いかなあ」
 良平が頷くのでありました。新木奈はちょっと白けたような、恨めし気な目なんぞを万太郎に向けるのでありました。
「まあ、あゆみさんがダメだとしても、二人は大丈夫なんだろう?」
 あゆみが出席出来ないのなら新木奈の真の目論見も無意味と化すと云う事でありましょうが、しかしあくまでも万太郎と良平の黒帯取得を祝うのが目的の酒宴である事を強調しようとしてか、新木奈はそんな風に訊いてくるのでありました。
「ええ。総士先生のお許しがあれば」
 良平が応えるのでありました。
「二人が大丈夫と云う事なら、それで結構だけどな」
 どこまでも自分が酒宴を提案した趣旨は、万太郎と良平の黒帯取得祝いなのであると云う事にしたいようであります。
「では、総士先生にお許しを貰っておきますよ」
「判った。じゃあ今度の金曜日の稽古までに返事を頼むよ。一応次の日の土曜日に決行と云う事で気のあった連中に声をかけておくから」
 その日の夕食の終わりかけの頃に、今度の土曜日に一般門下生の新木奈から、万太郎と良平の黒帯取得のお祝い会を開いてくれると云う申し出があったのだが、出席しても構わないであろうかと、良平が居間で食事をする是路総士にお伺いを立てるのでありました。
「ほう、それは有難い申し出だな」
 そうは云うものの、是路総士は特段喜ぶでもない顔つきで応えるのでありました。
「夜の七時過ぎからと云う事なので、道場の土曜日の務めには差し支えないと思います」
 良平がつけ足すのでありました。
「まあ、折角の門下生からのお誘いなんだからお受けしたら良い。私に遠慮は要らん」
「お受けして構わないでしょうか?」
「ああ、その時間からなら問題ないだろうよ」
「押忍。有難うございます」
「じゃあ、土曜日は良君と万ちゃんの夕食は要らないと云う事ね」
 調理担当であるあゆみが、その点を確認するのでありました。
「押忍。そう云う事になります」
「判ったわ」
 あゆみは無表情に頷くのでありました。
「実はあゆみさんの御出馬もと、新木奈さんは云っていたのですが」
「え、あたしも?」
 あゆみは良平の方に少しの驚きの顔を向けるのでありました。「だって、あたしは無関係じゃない。内弟子二人の黒帯のお祝い会なんでしょう?」
「ええまあ、それはそうですが、どうせなら、と云う事じゃないですか」
「あたしも序でに、と云う事かしら?」
(続)
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