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合気道の組形稽古について 2 [合気道の事など 2 雑文]

 受けの「引く」と云う組形の端緒に関わる動作だけでも多種多様であるし、そうであるならその受けの「引く」動作に「呼応」する仕手の最初の動きも多種多様にならざるを得ないのであります。この受けの「引く」と云う動作の形態を先ず以って規定しないと、その後に続けられる技の組形展開を述べる事は出来ないと云う事になって仕舞うのであります。あくまでも組形とは典型を錬磨するものでありますから、非実用的なように思えたとしても、先ずは自由度を極力排して、多種多様性の迂路を回避して行う稽古法であります。
 合気道の組形の約束稽古では実は受けの認識力がかなり重要になってくるのであります。先の事例に即して云えば、先ず受けがこれから稽古しようとする組形展開のためにはどのような引き方が要求されているのか、確実に理解していなければならないと云う事であります。組形の解説書ならばそう云う点の綿密さをも備えていて欲しいと思うのであります。
 まあ、既存の入門書や解説書の事は置くとして、ではこれから二三の組形の例を引きながら、仕手と受けの関係性、つまり受けの意識及び動きの展開と、それに対する仕手の「呼応性」に依拠した動きについて述べてみたいと思うのでありますが、取り上げる組形の技は日常的に稽古に於いてよく行われている基本的なものを抜粋して述べていきます。

 「正面打ち一ヶ条抑え(一)」或いは「正面打ち一教(表)」と呼称される技の組形の第一挙動目は、仕手と受けがお互いに間合いに入ったら、受けの動作の起こりを捉えて仕手より先を取って受けの眉間を目がけて手刀を打ちこむのであります。先を取られた受けはその仕手の手刀を、同側の手を同じく手刀状にふり被って額の前で防ぎます。
 この手刀同士の接触の端緒に於いては先を取った仕手の有利、先を取られた受けの不利が現出しているのであります。受けはこの頽勢をめぐらすために接触の端緒以前の状態に戻ろうとして体を引いて元の間合いを取り戻そうとします。この時の夫々の心理の方向は、仕手の気持ちは自分の前方に、受けの気持ちは自分の後方に向かっているのであります。
 受けの、体を後ろに引こうとする動作の起こりに乗じ「呼応」して、仕手は斜め前方に大きく摺り足で誘導的に優勢を保持したまま踏み出して、手刀を防ごうとして挙げた受けの腕を一本取りに制した状態で、受けを蹲らせるように下方に崩します。これが第二挙動目であります。この第二挙動目に於いて仕手の「呼応性」が修錬されるのであります。
 でありますから、受けは上述した心理の方向に即した動作を先ず確実に行う必要があるのであります。その受けの動作の起こりを確実に仕手に伝える事に依って、それに「呼応」しようとする仕手のこの第二挙動目の動きが展開されるのでありますから。
 もし仮に受けが「先・後の理」を無視して受けた手刀で力を以って押し返そうとするなら、その受けの反応に対してはこれも「呼応性」に忠実に、仕手の方もより強い力でそれを対抗的に押し返そうとせずに、「正面打ち一ヶ条抑え(二)」或いは「正面打ち一教(裏)」と云う、後ろに回転して受け流す技に変化しなければならない筈であります。こうなると「(一)」或いは「(表)」技の組形を稽古しているのではなくなり、受けの不規則な変化に対して即応するための稽古に変質しているのであります。勿論そう云う稽古も必要でありますが、段階的には組形の謂いを先ず理解した後の、変化即応の稽古となるのであります。
(続)
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