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もうじやのたわむれ 334 [もうじやのたわむれ 12 創作]

「私が一々、話しの腰を折るのが気に入らないのでしょうか?」
 拙生は亀屋技官に顔の笑いを消して訊くのでありました。
「亡者さんの仮の姿の耐用時間もありますから、なるべく迅速に事を進めたいだけです」
 亀屋技官は無表情の儘クールにそう応えるのでありました。
「ああそうですか。それはどうも失礼しました」
「まあ兎も角」
 亀屋技官はそう云って、そこで仕切り直すように咳払いを一つするのでありました。「特例措置として、亡者さんは黄泉比良坂にある洞窟から娑婆に戻っていただく事になるわけでありますが、そこは小さな集落の外れにあると先に申しましたけれど、その集落には山での狩猟だとか、そこの特産品たる、エビカヅラと云う名前の山葡萄の実とか、タカムナと云う品種の筍とか、一枝に三個の実が生る桃とかの採取で生計を立てている鬼達が住んでいましてね、洞窟を使用するにあたっては、その集落の鬼の許諾が必要となるのです」
「その鬼さん達が洞窟を管理しているのですか?」
「準娑婆省から正式に委託を受けているのではないのですが、長い歴史的な経緯として、その集落の鬼達が洞窟の管轄管理権を専有しているのです。それは伝統と云うのか風習と云うのか、まあ、遠い昔からそういう既得権みたいなものが存在しているわけです」
「そこの鬼達てえものが、結構な強欲で、鬼の悪い連中でしてなあ」
 大酒呑太郎氏が後を続けるのでありました。「なかなか一筋縄ではいかんのですな」
「その、鬼の悪い、と云うのは娑婆で云うところの、人の悪い、ですね?」
「正解ですな」
 大酒呑太郎氏がピースサインをするのでありました。
「どのように、鬼が悪いのでしょうか?」
「ま、早い話しが、洞窟を使おうとする鬼に対して法外な洞窟使用料を要求するのですな」
「その法外な洞窟使用料には、私共娑婆交流協会もほとほと困っているんですよ」
 これは大岩会長が横から云う言葉でありました。「法外な使用料だけではなくて、使用料をケチった鬼に対して無体な仕打ちなんかをしたり、その鬼を鬼質にとって、娑婆交流協会に強請をかけたりするのです。それは連中の常套手段でして、全く性質の悪い輩です」
「ええと、その、鬼質、と云うのは娑婆で云うと、人質、ですね?」
「はい正解です」
 大岩会長もピースサインをするのでありました。
「集落の割の良い収入になるわけですから、集落中の鬼達が挙ってそういう阿漕な真似をするのです。どう云う了見をしているのか、もう本当に始末に負えませんな」
 大酒呑太郎氏が大袈裟に舌打ちをして見せるのでありました。
「その集落には、何人の、いや違った、何鬼の鬼達が住んでいるのですか?」
「そうですなあ、集落の鬼口は大体千五百程度でしょうかな」
「準娑婆省政府が警察とか軍とかを動員して、その集落を成敗したりはしないのですか?」
「まあ、結論から云うと、省当局は及び腰で、成敗等しませんなあ」
(続)
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