SSブログ

もうじやのたわむれ 14 [もうじやのたわむれ 1 創作]

「いやあ、まあ、考えてみればそんな連中は皆こちらへ来ているのでしょうから、そう云った豪華絢爛たるメンバーの刷新会議があっても、別に不思議ではないですよね」
 拙生は全く以って瞠目するのでありました。
「で、省内の審理部門で云えば、結局亡者様の審理については四つの審理所を廃止して、閻魔大王審理所のみを残して発展拡充し、閻魔庁と云う名前に改称して、ここで総ての審理を一括して行うと云うことになったのです。よって、赤鬼局と青鬼局は統合されて、名前も審理補佐局と改めて今に至っているのですよ」
「ははあ、成程。それがつまり、ここですね」
「そう云うことです」
 審問官が頷くのでありました。
「赤鬼局に所属されていた方が総て審問官で、青鬼局の方が総て記録官となる、と云うことでもないのですかね?」
「そうです。元赤鬼だろうが元青鬼だろうが、専門職試験に合格すれば審問官にもなれるし、記録官にもなれるのです。ま、血統ではなく能力主義と云うことです、建前上は」
「建前上は?」
「まあ、能力主義とは云っても、なんと云うのか、緩やかな職業の親子継承意識であるとか、門地であるとか地方閥であるとか出身大学の学閥であるとか、個人的なコネクションであるとか、それは矢張り依然として地下に脈々と存在していましてね。審問官系は元赤鬼、記録官系は元青鬼なんという、何故か知らないけど昔に出来た暗黙の住み分けと云うのは、曖昧ながらもなんとなく残っているのですよ」
「ふうん、そんなものですかねえ」
 拙生は少し口を尖らせるような表情をして、ゆっくり二三度頷くのでありました。
「ま、何処の社会も、そんなようなもので」
「なんとなく、ここへ来る前にいた娑婆の話しを聞いているような心持ちです」
「まあ、娑婆もここもそう変わらないでしょうかね、そんなところは」
「こちらと云うものは、あちらとは全く違った世界だと思っていましたが」
「そんなことはありませんよ。なにせ前に向こうにいた人が、今こっちに来ているのですからね、殆ど。居る連中は大体が同じヤツなのですから」
「しかし、こちらてえものは、娑婆っ気なんぞはこれっぽっちもない、まあ、向こうの目線で云えば、完全浄化された楽土なんだとばかり思っていました。向こうが穢土でこちらが浄土と云う認識です。まあ、私の勉強不足と云う事になるのでしょうが」
 拙生は頭を掻くのでありました。拙生が頭に当てた手を下ろすと、今度は記録官の方が話し出すのでありました。
「浄土なんと云う言葉が出るのは、さすがにお家の宗旨が浄土真宗だからでしょうかな。しかし兎も角、娑婆とこちらは、結局緊密に連関して存在しているわけですから、全然違う法則で動いているというのではないのです。あちらにある事はほぼ、こちらにもあるし、あちらにない事は大概、こちらにもないのです。まあ、総てと云うわけではないけれど」
(続)
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。