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合気道の「持ち手」に対する稽古Ⅲ [合気道の事など 2 雑文]

 次に相手の「持ち手」に対する密着度と云うものを考えてみたいと思います。
 捌きが「崩し」となってその最終域で「作り」ともなった時点での相手の手は、此方の「接触」している部位に密着していることが望ましいわけであります。持とうとし続けた相手がようやくに狙っていた此方の部位を捉えるのでありますから、その相手の意思を削ぐような待たせ方になっては意味がないのであります。
 但し相手は崩れています。しっかり持つには持ったが、体勢が不利であることはすぐに相手も察知しますから、それを立て直そうと試みます。しかしその試みの暇を与えず、此方はすぐに「投げ或いは固め」に入らなければなりません。相手の「持ち手」が「作り」のところで此方に密着していなければ、この間髪を入れない「投げ或いは固め」は成功しないでありましょう。
 そのためには此方の持たせる部位の、反発を招くような緊張を除去して相手に衝突感を感じさせないこと、相手に持たせたい位置で此方の部位が動揺しないこと、相手の持ちに来る勢いに此方の体勢が揺らがない体幹の強さが創られていること等が重要でありますが、錬られた「合気道体」をして合気道的な動きを遂行出来る此方の「動きの錬度」が高くなければ、これはなかなかに難しいことであります。それに姿勢維持筋群、揺らぎを制御する体幹の深部筋や股関節関連の深部筋の筋力と、同時にそれが働く時に強力な表層筋がその働きに拮抗しないように充分に緩んでいると云うような、云わば筋連動(相反抑制)に優れていることも重要なファクターでありましょう。これは所謂身体感覚、運動感覚の鋭敏さと云うものであります。以前に書いた『合気道と筋力』の頁で紹介した鍛錬や、目的を持った基本動作の反復、単純な捌き動作の反復稽古等でこの身体感覚や運動感覚が充分に養成されている必要がありますが、こうやって養成された体がつまり錬られた「合気道体」であり、高い「動きの錬度」を発生させる基であります。
 密着度と云うことに話を戻してみると、先ずは基本動作の相対稽古や定位置で相手にしっかり持たせた上での、捌きの動作が小さい基本技の稽古によってその密着感を実感し、動いてもその密着度が下がらないような鍛錬から始める必要があるでありましょう。そう云う動きの中で高い密着度を維持出来るようになったら、次第に大きな動きを加えていきます。先ずはゆっくりそれから次第に早く動いて、密着度への配慮を第一にします。この段階の後、「接触」は先ず「触れる」であり、相手の持とうとする意思を途切れさせることなく捌いて、その捌きの最終域で相手が此方の部位を高い密着度で捉えた瞬間が「握る」であり「接触」の完了であり、それは即「崩し」「作り」となって「投げ或いは固め」と云う技の完結に至ると云う稽古になるのであります。塩田剛三先生が仰っておられた「相手が縋りついてくるようでなければいかん」と云う状態が目指すところであります。
 また千田務先生はこの密着度と云うことに関して、例えば手首を相手に持たせた場合、此方の皮膚の遊び(緩み)がとれる程度を最良の密着度とされますし、肩を持たせた場合は大胸筋の収縮と弛緩を用いて密着度をコントロールされます。これは「高い密着度」が只単に「強い密着度」と必ずしも同一ではないと云うことでもあります。ここは我々の向後の課題として示唆的に一言しておくものであります。
(了)
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