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枯葉の髪飾りCⅩⅥ [枯葉の髪飾り 4 創作]

「ところで、合格発表は何時か、井渕は?」
 隅田が聞きます。
「今週の金曜日に一校と土曜日に二校。あっちの親類が見に行ってくれることになっとる」
「合格しとったら、また東京に行くとか?」
「いや、合格証と入学案内はその親類が貰ってきて、こっちに送ってくれるとくさ。そいで期日までに入学手続きばして、学費とかば振りこめばよかやろう」
「入学手続きとか、合格証ば貰うとは本人じゃなくてもよかとか?」
「代理で大丈夫やろう。叔母に行って貰うことにしとる。入学手続きば送るのとお金の振りこみはこっちからすればよかし。発表まで向こうに居れて云われたばってん、吉岡のことも気になるけん、高校の授業の方が大事かて云うて、戻ってきたとくさ」
「そんなら後は卒業まで、ずっとこっちに居らるっとか?」
「まあ、その積りやけど」
 拙生はそんな事情説明をするのでありました。
「オイは合格発表は来週の月曜日ばい。ちょっと福岡までオイは行ってくるけど」
 安田が云うのでありました。
「隅田はどがんなっとるとか。入試は?」
 拙生が聞きます。
「オイは三月に入ってからやからね、試験が」
「ところで島田の入試は、どがんなっとるとやろうか?」
 拙生は安田に聞くのでありました。
「島田のことはよう知らんばってん、今日第二志望の入試に行っとるとやなかかね。第一志望の方は、発表とか入学手続きとかは大体オイと同じ日程やったて思うぞ」
「しかも同じ福岡やしね」
 隅田が云うのでありました。
「そんならぞ、卒業前に、吉岡が退院して落ち着いて、隅田の入試が終わって、結果発表のあった後辺りで、夫々の報告がてら、皆打ち揃うて吉岡の家に行くか」
 拙生が提案するのでありました。
「しかしぞ、なんか卒業の決まっとるオイ達が、留年する吉岡の家に揃って行くて云うとも、なんとなく抵抗のある気のせんか?」
 隅田が難色を示します。
「大丈夫やなかか。卒業したらどうしても縁の薄うなるとやから、そう云う意味で」
 安田が云います。
「そりゃ、形式上はそうかも知れんけど、ひょっとしたらぞ、吉岡の内心ば傷つけることになりはせんやろうか、無神経に」
 確かにそう云う隅田の危惧する面もあるかも知れないと拙生は思うのでありました。もしも拙生の思い到らなさから吉岡佳世の気持が少しでも傷つく可能性があるようであるなら、この拙生の提案は撤回しなければなりません。
(続)
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