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枯葉の髪飾りCⅩⅤ [枯葉の髪飾り 4 創作]

 翌朝、登校すると拙生は先に教室に居た隅田を見つけて、早速吉岡佳世の退院が間近いことを知らせるのでありました。
「昨日病院で聞いたとけど、後一週間くらいで、吉岡が退院することになったぞ」
「おう、そうか。そりゃ良かった。しかし、て云うことは井渕、お前、昨日東京から帰って来て、学校にも来んで、真っ先に吉岡の病院に行ったて云うことか?」
「そうばい」
 隅田が呆れたような顔をしたのは拙生にしたら予想外のことでありました。そこへ安田がやって来たので安田にも拙生は同じことを云うのでありました。
「ま、それは朗報ばってん。ところで井渕、入試の方はどがんやったとか?」
「ああ、入試ね、そっちは成るように成るやろう」
「吉岡の退院と入試と、どっちが今のお前にとって大事かとか?」
 隅田はそう云った後すぐに顔の前で両手を横に振りながら続けます。「ああ、いや、愚問やった。吉岡の退院て云うに決まっとるか、井渕は」
「もう入試は終わったことけんが、すっかり頭の中から飛んで行っとるとやろう、井渕にしたら。まあ、オイも同じやけど」
 安田も福岡にあるキリスト教系の大学の入試が既に済んでいるのでありました。
「予定より大分遅れたばってん、吉岡もやっと退院か」
 隅田はそう云った後に笑いを顔から消して顎を撫でるのでありました。「ばってん、三学期は一回も出席しとらんけん、今から復学しても、卒業は無理やろうなあ」
「うん、多分無理やろう」
 拙生は云います。「それでもそれは、既に本人も判っとることやろうし、納得しとるやろう。兎に角、体の方が第一けんね。吉岡はもう、来年に、東京の大学ば受ける積もりでおるようやし」
「長い人生、若い時の一年留年なんかは、なんでもなかくさ」
 安田が妙に達観したようなことを云うのでありました。「まあ、オイ達にしても受験に失敗したら、向こう一年浪人生活ば送ることになるかも知れんし」
「よし、退院するとなら、まあだ入院しとる内に、もう一回お見舞いにでも行くか」
 隅田が云うのでありました。
「退院して、落ち着いてからでよかとじゃなかか、お見舞いは」
 拙生が隅田の発言に水を差します。
「まあそうね、そがん慌ててオイとか安田が、吉岡の様子ば見に行かんでもよかか」
 隅田が納得します。「吉岡が病院に居る内は、井渕に任せとけばよかしね」
「留年てなったら、もう三学期は学校には来んやろうね、吉岡は」
 安田が云うのでありました。
「そうね、来ても無駄やもんね。まあ、卒業までこっちも色々忙しかし、もうあんまり吉岡には逢えんて云うことになるか、オイとか安田は」
 隅田がまたもや顎をなでるのでありました。
(続)
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