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枯葉の髪飾りC [枯葉の髪飾り 4 創作]

 嬉しさから拙生は次の日学校で隅田と安田と島田に、拙生が実見した吉岡佳世の恢復具合を大いに話すのでありました。彼等はその話を喜び、島田は早速今度の土曜日に誰かクラスの女子を誘って見舞いに行くとのことでありました。隅田と安田は二日遅れて月曜日に拙生と一緒に病院に行くと云う予定を立てるのでありました。担任の坂下先生も拙生が吉岡佳世を早速見舞ったことを聞きつけて、彼女の様子などを終業のホームルームの後に態々拙生の席まで来て質すのでありました。
「普通の病室に戻ったて云う話は、一昨日吉岡のお母さんから電話ば貰うとったけど、そんならオイも明日辺り、見舞いに行ってみようかね」
 坂下先生はそんなことを云いながら、何故か拙生の肩を一つ叩くのでありました。拙生は吉岡佳世がこの春に卒業出来る見こみがまだあるのか、見こみがあるのならこれから先どの様な条件を満たせば可能なのかを、坂下先生に聞いてみたいと思ったのでありますが、吉岡佳世本人を差し置いて彼女の保護者でもない拙生が、先にそれを知ろうとするのは僭越かと思い直すのでありました。それに吉岡佳世が拙生と一緒に卒業出来ようが出来まいが、兎に角これでやっと、彼女が長年苦しんだ持病と云う霧はさっぱり晴れたことになるのでありますから、この時点で拙生は彼女の、そして彼女と拙生の未来に明るい兆しをしか観測出来ないのでありました。
 吉岡佳世が元気になったら、もしかすると拙生はこの四月から東京へ生活の拠点を移すことになるのでありますが、それでも夏休みには帰郷して二ヶ月間彼女と一緒に休暇を楽しむのであります。海にも二人で行けるし、今年は彼女も泳ぐことが出来るかも知れません。公園で毎日逢って話をしたり、二人で何処かに食事に行ったり、喫茶店でアイスコーヒーとかソーダ水なんかを飲んだり、映画を見たり、まあ、なにもすることがなくても、彼女と二人で過ごせるのならそんな退屈もきっと麗しい時間に違いないのであります。お盆には精霊流しも彼女と一緒に見物するのであります。その時彼女が浴衣など着て来たらそれはもう最高であります。細身の彼女には浴衣がよく似あうでありましょう。ああ、しかし、彼女は今年の夏は受験生と云うことになるのでありますから、そうそう遊びばかりに現を抜かしているわけもいきませんか。それでも、楽しい夏になることだけは受けあいであります。
 夏休みが終われば拙生はまた東京暮らしでありますが、なあにすぐに冬休みがやって来ますから、今度は隅田や安田や島田を呼び出して彼女とクリスマスパーティーであります。正月の初詣は彼女と一緒に八幡様にでも行きましょうか。彼女の病気平癒のお礼参りと云うことになりますか。
 春休みは、これは屹度彼女が受験のために東京へやって来ますから、拙生はそれまでは東京に留まって、彼女の受験のサポートをするのであります。ここが一丁、頼もしさの見せどころであります。大いに頼り甲斐のあるところを彼女に見せつけてやるのであります。
 吉岡佳世が晴れて大学生になったら、それ以降は何時だって彼女と逢えるのであります。佐世保を遠く離れて二人の仲はより緊密になって行くのであります。拙生は心躍らせながら、そんな楽しいことばかりの未来を思い描くのでありましたが。・・・
(続)
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