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合気道の少年指導と言葉 [合気道の事など 1 雑文]

 少年部の指導は気骨が折れるものであります。第一彼等は合気道に魅せられて自ら進んでその門に入ってきたのではなく、親に勧められてとか友達がやっているのでとか云った動機が殆どでありますから、こちらが注意をしていないととたんに稽古に飽きて、気が何処かへ散じてしまうのであります。冗談を云うとすかさず乗ってきて、ふざけ合いに少ない稽古時間を潰されてしまうし、少し厳しい口調を使えば時に泣き出すで、彼等の興味を稽古時間一杯喚起し続けるのはなかなか至難の業であります。
 また合気道で使用される言葉が彼等には難解で、体の変更とか臂力の養成とか云われても、その動作がいま一つ鮮明にイメージ出来ないのであります。一ヶ条抑え、二ヶ条抑え等と技名がこれまた歴史的、抽象的、便宜的な名称でありますから、とても小学生のたち打ち出来るものではないのであります。まあ、技の実態と「ヒリキノヨウセイ」「イッカジョウオサエ」等とその言葉の音で関連づけて覚えて貰うしかないのでありますが、これは妙に言葉の意味を斟酌しようとする大人よりも、返って彼等の方が得意であるかも知れません。時たま「イノキノヨウセイ」になったり「ミッカジョウオサエ」になる可能性はありますが。
 体の変更二で九十五度回転せよと指示する場合、小学校一年生に九十五度と云っても判るわけがないので、横向きになるまで回れと指導するのでありますが、これは正確には横向きともうチョイ回れと指示しなければなりません。その「チョイ」がなかなか「チョイ」では収まらなくて、百八十度近くの回転になってしまうことが間々あります。そもそもこの九十五度とは、相手が押してくる場合、九十度の回転で止まると直角に相手の押力を受けることになり、その力を受け流すことにはならないのでそれよりはほんの少し行き過ぎる程度に回転する、と云った意味合いの数字であります。それを注意喚起的な云い方で「九十五度」と云うわけでありますが、相手の押す力を受け流せる最少角度と云うことであります。これを小学一年生に説明して理解してもらおうとするのは、これはもう無理と云うよりは無意味であります。ですから九十度と云った指示の方が角度的には此方の狙いに適合させ易いので「横向き」と云う風に云うわけであります。
 余談ですがこの九十五度を、ではどうして九十四度とか九十六度ではだめなのですか、それにそんな正確に九十五度の角度を出せるのですか等と、真顔で聞いてくる大人の稽古者が嘗て居ました。拙生は苦笑いながら先に述べたことを説明して、何故「九十五度」と云う言葉かを理解してもらうよう努めたのでありました。
 さて、軸足、中心、固定、重心、継ぎ足、歩み足、振りかぶり、切りおろし、手刀を返す等々、合気道の稽古で使われる言葉はどれも子供にはとても難解なものであります。云い換え可能なものは云い換えるとしても、云い換えると意味あいがずれてしまうものもあります。また、日々新しい言葉が生成され、中には意味不明な言葉が指導者の思いつきによって造語され、一般の理解を無視して乱用されたりしている合気道界の現状があります。子供と云う対象を念頭に置く時、この言葉の乱れ、或いは言葉の不統一はその指導に弊をもたらすと考えられます。一考を要すると思われますが、少年指導に限らず、合気道指導一般に於いても言葉の問題はもう少し掘り下げて考えてみたい課題であります。
(了)
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