枯葉の髪飾りLⅣ [枯葉の髪飾り 2 創作]
「家の方にも、夕食は要らんとか連絡もしとらんし。第一急で、そがん、あたし達のご飯の用意までしとらっさんとでしょうから」
島田が拙生の言葉につけ足します。
「ウチは大丈夫とよ。ご飯はいっぱい炊いとるとけんが」
吉岡佳世のお母さんは尚も勧めてくれるのですが、しかしここは遠慮しとこうと拙生と島田は丁重にそのお母さんの申し出を断るのでありました。吉岡佳世は面白そうにお母さんと拙生等のやり取りを見ているのでありました。
「どうせ、お父さんの帰って来らしたら用意せんといかんのやから、別に大丈夫とやけどねえ」
「お母さん、そがん無理強いしたらだめよ。」
吉岡佳世がお母さんを諌めます。
「別に、無理強いしとるわけじゃなかとけどさ」
吉岡佳世のお母さんはそう云いつつ、残念そうではありましたが取敢えずお茶の接待だけでなんとか引き下がってくれそうでありました。
「どがん、体は。もう本当に変な調子じゃなかと?」
島田が吉岡佳世にそう聞きます。
「うん、大丈夫。もう全然なんともないの。前にも時々こんなことのあったし、ちょっと休めば、すぐに快復すると」
吉岡佳世がニコニコしながらそう云って何度か頷いて見せます。
「テントの中で見かけた時は、びっくりしたよあたし。顔色の真っ蒼しとったけん」
「うん。あん時が一番辛かったて云えばそうかな」
「今思えばその前から、なんか調子の悪そうやったもんね」
拙生は図書館のベンチで彼女と並んで腰掛けていた時の光景を思い出しながら、そう云うのでありました。「やたら水筒のお茶ばっかい飲みよったし」
「うん、なんか変に喉の渇いとったの、あの時は」
「あん時にオイがちゃんと察してやればよかったとぞね、今思うと」
「ううん、井渕君のせいじゃなかし」
拙生は面目なさになんとなく項垂れるのでありましたが、すぐに顔を上げてあっと声をあげるのでありました。
「なん、どうしたと?」
吉岡佳世が驚いてそう聞きます。隣の島田も拙生の顔を覗きこみます。
「いや、水筒。テントに置きっぱなしにしとったとじゃなかか?」
「ああ、そう云えば、椅子に掛けたままやったかも知れん」
吉岡佳世が云います。
「島田は知らんやろう?」
拙生は島田の方に顔を向けます。
「うん、知らん。水筒のことなんか思いもせんやった」
(続)
島田が拙生の言葉につけ足します。
「ウチは大丈夫とよ。ご飯はいっぱい炊いとるとけんが」
吉岡佳世のお母さんは尚も勧めてくれるのですが、しかしここは遠慮しとこうと拙生と島田は丁重にそのお母さんの申し出を断るのでありました。吉岡佳世は面白そうにお母さんと拙生等のやり取りを見ているのでありました。
「どうせ、お父さんの帰って来らしたら用意せんといかんのやから、別に大丈夫とやけどねえ」
「お母さん、そがん無理強いしたらだめよ。」
吉岡佳世がお母さんを諌めます。
「別に、無理強いしとるわけじゃなかとけどさ」
吉岡佳世のお母さんはそう云いつつ、残念そうではありましたが取敢えずお茶の接待だけでなんとか引き下がってくれそうでありました。
「どがん、体は。もう本当に変な調子じゃなかと?」
島田が吉岡佳世にそう聞きます。
「うん、大丈夫。もう全然なんともないの。前にも時々こんなことのあったし、ちょっと休めば、すぐに快復すると」
吉岡佳世がニコニコしながらそう云って何度か頷いて見せます。
「テントの中で見かけた時は、びっくりしたよあたし。顔色の真っ蒼しとったけん」
「うん。あん時が一番辛かったて云えばそうかな」
「今思えばその前から、なんか調子の悪そうやったもんね」
拙生は図書館のベンチで彼女と並んで腰掛けていた時の光景を思い出しながら、そう云うのでありました。「やたら水筒のお茶ばっかい飲みよったし」
「うん、なんか変に喉の渇いとったの、あの時は」
「あん時にオイがちゃんと察してやればよかったとぞね、今思うと」
「ううん、井渕君のせいじゃなかし」
拙生は面目なさになんとなく項垂れるのでありましたが、すぐに顔を上げてあっと声をあげるのでありました。
「なん、どうしたと?」
吉岡佳世が驚いてそう聞きます。隣の島田も拙生の顔を覗きこみます。
「いや、水筒。テントに置きっぱなしにしとったとじゃなかか?」
「ああ、そう云えば、椅子に掛けたままやったかも知れん」
吉岡佳世が云います。
「島田は知らんやろう?」
拙生は島田の方に顔を向けます。
「うん、知らん。水筒のことなんか思いもせんやった」
(続)
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