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枯葉の髪飾りⅦ [枯葉の髪飾り 1 創作]

「夏休み中に受けることになっとる期末試験はいつあるとか?」
 拙生は云うのでありました。
「八月の最後の週の月火水曜日」
「なんか必要ならオイの出来る範囲で協力しようか?」
「有難う。ああ、そしたら倫理社会と数Ⅲのノート、よかったら貸して貰える?」
「よし判った。倫社と数Ⅲね」
 拙生は頷きます。
「英語と国語と政治経済もあるけど、これはなんとかなると思うから」
「なんなら、その三科目のノートも持って来くるか?」
「それは助かるけど、そしたら井渕君の勉強の方が困るとやないの?」
「よかよか。どうせ夏休み中は受験科目の勉強で、普段の学科の勉強なんかせんもん」
 吉岡佳世は胸の前で合掌して、もう一度有難うと云うのでありました。
「ノートはどがんして渡せばよかとや?」
 拙生が聞きます。
「来週の木曜日は井渕君、病院は?」
「おお、来る来る。そん時渡せばよかか?」
「うん。助かる」
「そしたら来週、今日と同じくらいの時間でここに持って来ればよかとね」
「はい。お願いします」
 吉岡佳世はしおらしくそう云って頭を下げるのでありました。
「いや、考えたらもっと手っ取り早かことのある」
 拙生はそう云ってにやりと笑います。「七月にあった期末試験の問題用紙も一緒に持って来るか。多分同じ試験用紙でお前も受けることになるやろうから」
 吉岡佳世の目がきらと輝きます。しかしすぐにその目の輝きを恥じて隠すように彼女は俯いてて云うのであります。
「そう云うのはずるいとじゃない?」
 彼女は伏せた眼を少し上げて拙生を見ます。
「ずるかかも知れんけど、いい方法ではあるぞ」
「そがんインチキしたら、後で怒られるやろう」
「怒られるて、誰に?」
「先生に」
「先生には判らんやろう、そがんこと」
「ばってん・・・・」
「ま、お前がそう云う行為を潔しとしないなら、オイとしてはそれを尊重してテスト用紙は持って来んようにするけど」
 拙生は吉岡佳世のこう云う潔癖さを、実は好ましく思うのでありました。
(続)
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