ぎゅうにゅうⅢ [ぎゅうにゅう 創作]
「アメリカ人のことは、みんなそがん云うと?」
拙生は少年に聞くのでありました。
「大体そう云うとやろうけど、特にオイ達んごと黒かとばそがん云うと」
「へえ、黒か人のことば云うとね。そしたら白か人のことは?」
少年はアメリカ東部に住む白人一般の呼称を教えてくれるのでありました。
「ばってん本当は、オイのごたる者には別の呼び名もついとるとぞ」
少年は今度は混血児を呼ぶ呼称を拙生に紹介するのでありました。「アメリカ人と他の国の人間の間に生まれたヤツはそがん風に呼ぶと」
「なんでお父さんとお母さんと、その子供のあんたは全部違う呼び名のついとると?」
拙生は聞きます。
「さあ、なんでかは知らんばってん、とにかく別々になっとる」
「なんか僕、よう判らんごとなってきた」
「アメリカにはいろんなヤツがおるけん、結構難しかと」
「アメリカに行ったこと、あると?」
「いいや、行ったことはなか。ばってんオイはアメリカ人けんなんでも知っとる」
「へえ、すごかねえ」
「父ちゃんもそうらしかけど、オイなんかより・・・」
少年はアフリカ系アメリカ人の蔑称を云って続けます。「・・・の本物はもっと真っ黒しとる。そいつ等が時々家に泊まりに来るけど、オイのことばいつでん邪魔にするけん、オイはあいつ等のことはあんまい好かん」
「お父さんの友達?」
「いや違う。オイは父ちゃんのことはよう知らんもん。一緒に住んどらんけん」
「どこに行っとらすと?」
「アメリカやろう多分」
「なんでアメリカに行っとらすと?」
「アメリカ人けんがくさ」
ああそれはその通りだと拙生は納得します。
「いつ帰らすと?」
「知らん。母ちゃんも知らんて云わす」
「ふうん」
拙生にはなんとなくその辺りの事情がもやもやと判りづらいのでありました。
「なんて云うと、名前?」
拙生が聞きます。
「え、なんの?」
「あんたの名前さ」
「ああ、なあんか、オイの名前のことか」
少年は顎を少し突き出して続けます。「オイの名前は、ぎゅうにゅう」
(続)
拙生は少年に聞くのでありました。
「大体そう云うとやろうけど、特にオイ達んごと黒かとばそがん云うと」
「へえ、黒か人のことば云うとね。そしたら白か人のことは?」
少年はアメリカ東部に住む白人一般の呼称を教えてくれるのでありました。
「ばってん本当は、オイのごたる者には別の呼び名もついとるとぞ」
少年は今度は混血児を呼ぶ呼称を拙生に紹介するのでありました。「アメリカ人と他の国の人間の間に生まれたヤツはそがん風に呼ぶと」
「なんでお父さんとお母さんと、その子供のあんたは全部違う呼び名のついとると?」
拙生は聞きます。
「さあ、なんでかは知らんばってん、とにかく別々になっとる」
「なんか僕、よう判らんごとなってきた」
「アメリカにはいろんなヤツがおるけん、結構難しかと」
「アメリカに行ったこと、あると?」
「いいや、行ったことはなか。ばってんオイはアメリカ人けんなんでも知っとる」
「へえ、すごかねえ」
「父ちゃんもそうらしかけど、オイなんかより・・・」
少年はアフリカ系アメリカ人の蔑称を云って続けます。「・・・の本物はもっと真っ黒しとる。そいつ等が時々家に泊まりに来るけど、オイのことばいつでん邪魔にするけん、オイはあいつ等のことはあんまい好かん」
「お父さんの友達?」
「いや違う。オイは父ちゃんのことはよう知らんもん。一緒に住んどらんけん」
「どこに行っとらすと?」
「アメリカやろう多分」
「なんでアメリカに行っとらすと?」
「アメリカ人けんがくさ」
ああそれはその通りだと拙生は納得します。
「いつ帰らすと?」
「知らん。母ちゃんも知らんて云わす」
「ふうん」
拙生にはなんとなくその辺りの事情がもやもやと判りづらいのでありました。
「なんて云うと、名前?」
拙生が聞きます。
「え、なんの?」
「あんたの名前さ」
「ああ、なあんか、オイの名前のことか」
少年は顎を少し突き出して続けます。「オイの名前は、ぎゅうにゅう」
(続)
2008-06-27 11:23
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